メークローン線・市場の中の駅へ
[2011年8月]
メークローン (Maeklong) 線は、バンコク市南西のウォンウィアンヤイ (Wongwian Yai) 駅から伸びる、タイ国鉄 (SRT) 運営のローカル線です。終点のメークローン駅は、市場の中を走る駅として、近年有名になりました。この路線には5年前にも一度訪れていますが、その際は時間の都合で途中のマハーチャイ (Mahachai) までしか行くことができなかったので、今回は5年越しの「悲願達成」に向け、終点メークローンまで乗り通してみることにします。
※5年前訪問時のマハーチャイまでの旅はこちら
市街地に埋もれた小さなウォンウィアンヤイ駅。以前は、他の鉄道との接続が無い完全に孤立した駅でしたが、現在は近くまでスカイトレイン (BTS) が延伸され、メークローン線とBTSとを乗り継ぐ乗客も結構増えたようです。ただしBTSの駅までは結構距離があり、渋滞が無い時間帯であればタクシーのほうが便利という状況には変わりがありません。
マハーチャイまでは1時間ほどで到着。マハーチャイまでの区間は前回もやって来たので、今回は詳細は省きます。5年前との相違点で目に付いたのは、開けっ放しで走っていた乗降扉がきちんと閉められるようになったことくらいでしょうか。
メークローン線はマハーチャイとバーンレーム (Ban Laem) との間が川で分断されており、各自で渡し舟に乗って川を渡ります。頻繁運行のバーンレーム中心部行きの便と、列車の時間に合わせて運行される駅前桟橋行きの便とがあるようですが、よくわからないので頻繁運行の方に乗ります。料金は3バーツ (約8円)。写真の右端に小さく写る同型の船が泊まっている所が対岸の船着場で、乗船時間は数分程度です。
バーンレーム側の船着場は、建物に埋もれた非常に分りにくいところにあります。英文表示等も見当たらず、バーンレーム側から乗る場合は少し迷うかもしれません。駅はここから川沿いに西へ5分ほど歩いたところにあります。これも知っていないと場所が分りにくいかも。
駅まで歩いているうちに、だんだんと発車時間が迫り、焦って早歩き気味になりながらバーンレーム駅に到着。バーンレームからの区間は列車が一日に4本しかなく、乗り遅れると悲惨です。ホームには列車が停まっており、「良かった、間に合った」と思ったのですが、エンジンがかかっておらず、どうやら乗るのはこの車両ではないようです。メークローンからの折り返しの列車に乗ることになりそうですが…まだ来ていません。
こちらが駅の正面口。川岸に面しています。一日4往復でも駅員は配置されており、窓口で切符を購入します。
折り返し列車は、30分ほど遅れて到着。すでにバーンレーム駅の発車時刻を過ぎています。
乗客は二十人程度。やはりマハーチャイまでの区間に比べると、かなり閑散としています。乗客は半分くらがい外国からの旅行客風です。
目の前に見える線路は廃線跡と見紛うような状態で、予想通りよく揺れます。
時刻表とにらめっこしながら、窓から写真をバシバシと撮っていると、車掌に声をかけられ、なんと運転室の助手席へ御招待。前面展望の眺めもさることながら、一般客室のプラスチックシートとは違い、椅子の座り心地も上々です。ここからは特等席での旅になります。
途中駅はどこもこのような感じ。プラットホームだけ綺麗に作りかえられているようです。軌道維持に回すお金が無いので、せめてホームだけでも、というところでしょうか。しかし、列車が2両編成なのにもかかわらず、ホームの長さは1両分程度しかありません。
素人目にも分る軌道状態の悪さで、揺れる車両で写真を撮るのも一苦労。ところどころで速度制限がかかっていますが、その制限速度すら出せなくなってしまった箇所もあるようで、そのたびに列車は最徐行状態となります。更に遅れが拡大します。
ゆらり揺られて1時間、周囲に建物が増えてきました。いよいよ列車は、終点のメークローン駅へ近づきます。
市場の商品は線路際に並べられたまま、両脇の店の日除けのみがたたまれています。その軒先を掠めるように列車は通り抜けていきます。日除けを抑える店員の姿が見えます。
しかしよく見ると、店員以外にも、そこかしこにカメラを構えた観光客の姿が…。
駅に着く頃には、大勢の観光客によってお出迎え状態。何かの記念列車のような雰囲気になってしまいました。どうもこのメークローン駅は予想以上に有名になっていたようです。
これは帰りの列車は大混雑だな…と思っていたら、観光客はほとんど車で来て帰るだけで、列車を利用するのは数人程度。最近はバンコクから車で往復する日帰りツアーなどもあるのでしょうか。せっかく来たのだから、片道や短区間くらい列車に乗っても良いのでは、という気もします。もっとも、市場に全く寄らず、乗って来た列車でそのまま帰ってしまう私自体もどうかという話なのですが。