海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

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ドバイトラム・中東の最新式路面電車

[2015年1月]

鉄道 (メトロ)、モノレールに続くドバイの新たな鉄軌道系交通機関として、2014年の末に路面電車「ドバイトラム (Dubai Tram)」が開業しました。当初は「アル・スフォー・トラム (Al Sufouh Tram)」と呼ばれていましたが、開業に際して現在の正式名に改称されました。最新の技術が盛り込まれたこのトラムに乗ってみます。

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ドバイトラムが走っているのは、ドバイ中心部から少し離れたマリーナ地区周辺。「ドバイメトロ」とはダマック・プロパティーズ (DAMAC Properties) 駅、およびジュメイラ・レイクス・タワーズ (Jumeirah Lakes Towers) 駅の2箇所で接続されており、トラム停留所とメトロの駅は歩道橋で連結されています。歩道橋からはトラムの線路を見ると、架線がないことが分かります。


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停留所はこのような感じ。「停留所」と呼ぶのが憚られるようなスクリーン式のホームドアが付いた完全空調完備の設備で、普通鉄道の駅よりも立派です。メトロの駅と同じく、酷暑のドバイの気候を考慮したものと思われます。


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停留所の中には、自動券売機と簡易改札機 (ヴァリデータ) があります。切符はメトロと共通の「ノル・カード」「ノル・チケット」です。券売機では「レッド・チケット」購入のほか、「ノル・カード」「ノル・チケット」の金額チャージ (Top-up) ができます。ただし停留所には警備員以外の駅係員はいないため、「ノル・カード」利用時はあらかじめメトロの駅などで買っておく必要があります。


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乗車時にはカードまたはチケットをヴァリデータにかざします。降車の際にももう一度かざす必要があります。車内での精算はできません。


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車両は、フランス・アルストム社製超低床車、シタディス (Citadis) 402シリーズ。アルストム社が開発した地上集電システムAPS (アリマンタシオン・パル・ル・ソル Alimentation par le sol:「地面から供給」の意味) を採用しており、架線がなく周囲がすっきりしています。軌道の中央にある集電用プレートに、列車通過時だけ通電される仕組みで、踏んでも感電の恐れはありません。このシステムが欧州外で採用された初のケースとのこと。


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このドバイトラムですが、交差点以外の部分ではほとんど専用軌道区間となっており、路面電車というよりはLRTに近いシステムと言えます。踏切部分との境には侵入者を防ぐ突起が設けられています。


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現時点では図のような「6の字型」の区間が開業していますが、将来的には市中心部方向に向かって延伸される予定です。運賃体系はメトロと共通化されており、現在の開業済み区間は全て「ゾーン2」の範囲内に入っています。メトロと30分以内に乗り継ぐと、ゾーン内を連続して乗車した扱いになるため、トラム分の料金は実質無料になります。


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上記路線図のうち、放射状区間は複線ですが、ループ区間は反時計回りの一方通行の単線となっています (一部複線区間あり)。一般的な運行形態としては、ループ内にあるジュメイラ・レイクス・タワーズを起点とし、放射状区間の末端にあるアル・スフォーまで行って折り返した後、帰りはループ区間を通って再びジュメイラ・レイクス・タワーズに戻るというもので、進行方向の関係で、運行の度に列車編成の前後が入れ替わります。


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列車の前後が入れ替わっても、外観上は前後の区別は付きにくいですが、メトロと同様の特別席「ゴールドクラス」が編成の一方の端に設けられているため、列車毎にゴールドクラスの連結位置が変わってしまいます。そのため、停留所の案内表示にて、列車毎にゴールドクラスの連結位置を「Front (前)」または「Rear (後)」と表示して案内を行っています。


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車内の様子。青色の座席が一般席「レギュラークラス」です。奥に見える黄緑色の席は女性専用席で、「ゴールドクラス」とは反対側の編成端に設けられています。上述の通り列車毎に連結位置が変わるため、メトロほどには乗客への徹底が進んでおらず、男性客が知らずに女性専用席に座ってしまうこともしばしばあります。知らずにゴールドクラスに座っている観光客の姿もあります。


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ドバイトラムは、パーム・ジュメイラ停留所でモノレールの駅とも接続しています。これまで「陸の孤島」であったモノレールも、これで多少利用しやすくなりましたが、相変わらず冷やかし観光客が利用する程度にとどまっているようです。モノレールの駅が入るこのビルも、巨大な廃墟状態が続いています。今後のトラム延伸に伴って、モノレールの利用客も増えてくれると良いのですが。


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