サイゴン駅と車両基地
[2012年3月]
ホーチミンシティのサイゴン駅を紹介します。ホーチミンシティはベトナム戦争後に旧サイゴン市から改名されましたが、今も駅名だけは旧市名が引き続き使用されています。ベトナムでも市民の「鉄道離れ」が続き、鉄道駅の存在もあまり目立たなくなってしまいましたが、現在もベトナム鉄道南北線 (統一鉄道) の終着駅として、変わらぬ活躍を続けています。
簡素な造りのサイゴン駅の駅舎。サイゴン駅はホーチミンシティの中心部からやや離れており、普段は人影はあまり多くありません。ただ、一時的に駅前が人でごった返す長距離列車の到着時に備え、駅前のタクシープールにはたくさんのタクシーが待機しています。
駅舎の目の前に展示されている、141型蒸気機関車。かつてベトナムで最大出力を誇った主力機でした。展示用の線路には「銀河鉄道999」のように、天に向かって走るような勾配がつけられています。
駅舎の近くには、一本だけ荷物車用の引込み線があります。運がよければ客車が入線している姿を間近に見ることができます。
駅舎の入り口付近には、サイゴン駅を発着する全列車の時刻表 (全停車駅掲載) と運賃表が掲載されています。ベトナム鉄道の時刻表はネット上の公式サイトの情報も古かったりして信頼性にかける場合が多く、結局は駅に行って掲示物を確認するのが一番信頼できる方法です。もっとも、それすら間違っている場合もあるのですが。
駅舎の中の風景。それほど大きな建物ではありませんが、空間を贅沢に使ってしまっており、待合スペースはあまりありません。右端の青いアオザイの制服を着た女性が立っているところが改札口で、列車の発車15~30分くらい前になると、改札口が開いてプラットホームに入場できるようになります。
二階に通じる階段とエスカレーターは、普段は閉鎖されています。
二階には大きな待合室と切符売り場がありますが、テト (旧正月、毎年1月下旬~2月上旬頃) 前の繁忙期等以外はあまり使用されていません (この写真は1月のテト前に撮影)。普段は一階部分のみの営業です。
こちらが一階にある普段用の待合室。
普段はここの切符売り場のみ営業しています。窓口の係員は英語をあまり話さないので、切符の購入は、紙に書いて見せるのが一番確実な方法です。ただ、「その日に行って帰ってくるだけの往復切符」といった鉄道趣味丸出しの切符を購入しようとすると、「鉄道趣味に対する理解度」が低い分、「ほんとにこんな切符で良いの?」という感じで係員が疑問をぶつけてきます。身振り手振りで分かってもらうしかありませんが、説明するのも結構疲れます。
一応、窓口は順番制で、こちらの機械から番号札を取るのが原則です。もちろん、すいているときは札を取る必要は無いですし、逆に混んでいるときは「100人待ち」とか出たりして心が折れてしまい、私は一度もまともに使ったことはありません。繁忙期以外でも夕刻は比較的混んでることが多いので、時間に余裕がある人は、夜の10時半~11時位に訪れるのがおすすめです。
サイゴン駅には、隣接して車両基地があります。駅からは少し回り道をして徒歩20分ほどの距離。道は少々分りにくく、線路沿いに歩いていくという技が使えない (壁に阻まれて線路が見えない) ので、訪問時は事前に道順を調べていくことをおすすめします。この写真は、踏切からの光景ですが、実は線路脇の舗装された部分は、基地構内ではなく一般道なので、もう少し奥まで入っていけます。
当然ながら、ときどき列車が入線してきます。
少し奥まで入れても、実際にはすぐにゲートに行き先を阻まれます。一般人が入れるのはここまで。ゲートの看板には「シー・ギエップ・ダウ・マイ・サイ・ゴン (Xí Nghiệp Đầu Máy Sài Gòn、サイゴン機関車工場)」との表記があります。
しかし、実はこの車両基地、構内に入る裏技があります。別のゲートに回って、警備員に一声かけて中に入ります。
車両基地の構内には、屋内運動場やテニスコートなどのレクリエーション施設があり、一般市民に開放されています。そのため、実際には入るのに特別な許可は要りません。とはいえ、怪しい外国人が英語や片言のベトナム語で警備員と交渉しても、追い返されてしまうのは必至。私の場合は、仕事仲間のベトナム人スタッフを通訳代わりに引き連れて行きました (笑)。ちなみに、「車両基地に入れる」という情報も、そのスタッフ君から聞いたもの。
というわけで、無事内部に潜入。まずは大きな機関庫がありますが、シャッターが全て閉められており、まあ特に面白みもありません。
構内の線路に沿って歩くと、間近に機関車が見られることもあります。
こちらは客車の留置スペース。入り口のゲートは狭いですが、結構中は広いです。
そこそこに楽しめる空間ではあるのですが、実際には歩き回れる区域が限られており、「何かお宝車両でも見つかるかも」などと期待を抱きすぎると、少々肩透かしな見学ツアーになるかもしれません。