海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

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阿里山森林鉄路

[2016年3月]

日本でも知名度の高い台湾の山岳鉄道、阿里山森林鉄路。度重なる自然災害により部分運休を繰り返しており、2016年現在も途中の奮起湖から先の区間が運休中となっています (山頂側にある祝山線は別途営業中)。部分営業中の嘉義から奮起湖までの区間を、日帰りで往復してみることにします。

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現在のダイヤは、奮起湖まで毎日一往復のみという簡素なもの。週末は二往復に増発されます。全席指定ですが、海外からの事前予約は難しいため、当日朝8時の営業開始時刻に窓口に出向いて指定券の購入を試みます。しかし、この日は平日で、他に並んでいる客もほとんどいなかったにも関わらず、往路便は既に満席。「無座 (立席) ならありますが」と言われ、2時間20分の所要時間を考えて一瞬迷いますが、せっかく台湾まで来たことを考えれば、ここで断念という選択もありません。


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阿里山森林鉄路のホームは、嘉義駅の一番端。線路がナローゲージ (762 mm) のため、専用ホームとなっています。


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列車は、麓側に機関車、山頂側に制御客車をそれぞれ連結したプッシュプル編成。小ぶりな客車は5両が連結されています。


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日本の大井川鉄道と黒部峡谷鉄道とは、それぞれ姉妹提携しています。


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少々狭い車内で、終点までの2時間20分を過ごすことにします。車内は1+2列のリクライニングシートが並び、冷房も完備されています。座ることができれば特急列車並みの設備に与れます。トイレも客車内に設置されています。


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嘉義を出発した列車は、ほどなく次の北門駅に到着。公園の中の駅で、阿里山森林鉄路の車両基地が隣接しているほか、昔の車両の静態保存展示などもあります。市街地の中心部にも近いため、この駅から乗車する客も多く、嘉義出発時にはちらほら空席が見られた車内も、ここからほぼ満席になります。私と同じ立客も結構いますが、身動きが取れないというほどではありません。


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列車はしばらく市街地の中を走ります。「森林鉄道」の雰囲気はまだありません。


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市街地の縁にある竹崎駅。この駅を過ぎると、車窓の風景はがらりと変わり、勾配とカーブが連続する山岳区間へ入っていきます。


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勾配の途中にある樟腦寮駅。スイッチバックの設備がありますが、列車は普通に本線上に停車し、スイッチバックは行わずに先へ進んで行きます。


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いよいよ山が深くなり、山岳鉄道らしくなってきます。


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列車は、阿里山森林鉄路の目玉の一つでもある、獨立山のスパイラルループ線に入ります。眼下には一瞬だけ、先ほど停車した樟腦寮駅が見えます。


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スパイラルループの途中にある獨立山駅。このあたりでは、登山客の区間利用も結構あります。途中駅はほとんど無人駅のため、車掌が車内補充券を発行して回ります。


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行き違い設備がある交力坪駅。現在のダイヤでは途中で列車の行き違いはありませんが、車掌は通票交換を行っています。


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麓の数駅以外は、途中駅にはプラットホームがなく、どの駅にも列車の乗降扉部分に踏み台が置かれているのみです。停車位置がずれると乗降が困難になりますが、そこは運転手の技能が試されます。


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終点の奮起湖には定刻に到着し、立ちっぱなしの列車旅は終了。折り返し列車の発車までの時間は2時間40分です。奮起湖とはいっても実際に湖があるわけではなく、山に囲まれた窪地に霧が溜まった状態を湖に見立てて名づけられた地名とのことです。


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機関車は日本車両製 (台湾でノックダウン生産) の30トン級ディーゼル機関車で、比較的新しい2007年の製造。阿里山森林鉄路で現役で活躍している機関車はすべて日本製です。


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駅に隣接して小さな車庫があります。主に車両の展示館として使われており、中は自由に見学することができます。


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かつて阿里山森林鉄路で使用されていた蒸気機関車などが展示されています。蒸気機関車はシェイ式と呼ばれる米国製の歯車式の機関車で、いずれも阿里山森林鉄路が開業した1910年頃の製造。ディーゼル機関車の方は現役っぽく見えますが、稼働状態にあるのかは不明です。


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獨立山のスパイラルループの模型もあります。その他、阿里山森林鉄道と大井川鉄道との姉妹提携の際にやり取りされた手紙なども展示されています。


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奮起湖から先、阿里山に向かって伸びる運休中の線路。新たな土砂崩れの発生等もあり、全線復旧の時期は見通せていないようですが、復旧工事は現在も鋭意進められています。


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ずっと天候に恵まれない旅が続いていますが、更に霧も出てきて、雨もますます強くなります。しばらく駅舎内で雨が収まるのを待ちます。


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朝方に嘉義駅で切符を購入した時点では、奮起湖発の折り返し列車にはまだ空席がありましたが、そちらも既に満席になってしまったようです。往路はバス、帰路は鉄道で、という客も多いのかもしれません。


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雨も小降りになってきたので、駅周辺の散策に出かけます。駅前には老街と呼ばれる古い町並み (実質的には商店街) があり、「南台湾の九份」とも称されています。ただし、規模はかなり小さく、10分もあれば見て回れる程度です。


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奮起湖の名物に「奮起湖弁当」があります。かつて鉄道がこの地域の唯一の移動手段であった頃、列車の乗客に大人気を博していたという駅弁で、現在も奮起湖観光の定番です。私も昼食がてら試してみることにします。この奮起湖というところ、鉄道が部分運休していなければ訪れることもなかったと思いますが、台湾では以前から人気の観光地のようです。「奮起湖弁当」を販売している「奮起湖大飯店」もかなり儲かっていそうな様子。


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雨のおかげであまり遠くまでは出歩けませんでしたが、ちょっとした駅前観光を終え、帰りの列車に乗り込みます。帰路の指定券は嘉義出発時に確保済み。


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指定された席は、運よく1人掛けの席でしたが、外は霧が深く、車窓はあまり望めません。小さい車体も相まって、鉄道というより、バスに乗っている気分です。


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窓の外では、山あいに霧が溜まり、湖のように見えます。恐らく奮起湖もこのような景色に見えるのではないかと想像しつつ、嘉義までの帰路を進みます。往路の立ちっぱなしの旅の疲れが出てきたのか、帰りはほとんど半眠りです。


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