海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

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国際夜行列車「イスタンブール - ソフィア・エクスプレス」

[2024年5月]

ブルガリアの首都ソフィアとトルコの最大都市イスタンブールを結ぶ国際夜行列車に乗車します。かつてこのルートには、セルビアのベオグラードからイスタンブールまで「バルカン・エクスプレス」が運行されていましたが、2013年に一旦廃止された後、2017年にソフィアまでの区間だけが列車名も変えた上で復活しました。夜行列車退潮の中、かろうじて生き残っているという感じです。

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出発はソフィア中央駅 (ツェントラルナ・ガラ・ソフィヤ Tsentralnaya gara Sofiya) から。18:45発の493列車です。


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この列車にはブルガリア国内区間だけ連結される座席車もあり、国内列車としての役割も併せ持っています。座席車は5両あり、うち4両が途中のプロヴディフ (Plovdiv) まで、残る1両が国境の駅、スヴィレングラト (Svilengrad) まで連結されます。


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プロヴディフ行き客車は、二等車が3両と、一等車が1両。ブルガリア名物の車体の落書きは、たとえ一等車であっても容赦がありません。


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こちらは唯一スヴィレングラトまで連結される客車。一等二等合造車です。


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スヴィレングラト行き客車の行き先表示。「国際列車」という言葉の雰囲気からは程遠い、簡素な表示です。


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トルコへ直通する客車は3両で、いずれもトルコ国鉄 (TCDD) 所属車。こちらは落書きもなく清潔で、ブルガリア客車との落差を感じさせます。


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トルコ直通客車の内訳は、寝台車が2両に、クシェット車が1両で、食堂車などは連結されていません。


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牽引機は、旧チェコスロバキアのシュコダ (Škoda) 社製の44型電気機関車。


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長距離列車らしく、大きな荷物を持った乗客の姿が目立ちます。なおトルコ直通客車に乗務する車掌はブルガリア国内区間も含めてトルコ国鉄側が担当しています。


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トルコ客車の行き先表示。記載された列車名は「ソフィア - イスタンブール・エクスプレス」であったり、逆に「イスタンブール - ソフィア・エクスプレス」としてあったりで、明確には定まっていないようです。二国関係を同格とするため、敢えて両方の名前を混在させている可能性はあります。またブルガリア国鉄の公式サイトでは、特に列車名は記載されていません。


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個室内に入ります。今回は二人用寝台の一人利用 (シングル) です。車内には洗面台、机、冷蔵庫などが備えられています。


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寝台は二段式。下段寝台は座面にそのまま寝るのではなく、背もたれを手前に倒し、その裏側を寝台として使用する仕組みです。座面そのままより寝心地が良さそうに思えますが、座席使用時に肘掛けに体重を乗せて立ち上がろうとすると、その勢いで背もたれが手前に倒れてきたりして、若干使い勝手が悪い気はします。


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個室の入口側。入口上部に空調の調節パネルもあり、個別に室温調整も可能です。洗面台横に電気ポットが置かれており、「これで熱いお茶でもどうぞ」というサービスか? さすがチャイで有名なトルコだ…などと思っていたら、どうも車掌の私物だったらしく、私が個室に入った後、そそくさと回収していきました。そういうのは自分の居室でやってくださいという話。


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備え付けの冷蔵庫には、二人分用の水、ジュース、スナック菓子などが用意されています。車掌が来た際、「シングル利用なら一人分ね」ということで、一人分を回収していきました。


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列車はまだ辺りが明るいうちにソフィアを出発。前述の通りブルガリア国内列車としての役割も兼ねているため、こまめに駅に停車していきます。寝台車の乗車率は2両合わせて7割くらい。今回はわざわざ高い手数料を支払って、代理人に頼んで事前に切符を予約しましたが、オフシーズンは当日購入でも大丈夫かもしれません。


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暗くなってきたので、室内灯を点けよう…としても点きません。コンセントに繋いだスマホも充電されてないし、空調も効かなければ、冷蔵庫も全く冷たくならず。車掌に尋ねたところ、英語が通じず要領を得ないものの、どうも電気系統が故障している様子。「ちょっと待ってて」という感じのことを言われたような気がしますが、復旧は早々に諦めたようで、そのまま放置。この暗い車内で一晩を過ごす羽目になりました。


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車両全体で電源が完全に落ちた訳ではなく、個室内は窓側の薄暗い照明だけは使用可能で、また廊下やトイレなど共用部分は問題なく電気が来ており、少し我慢すれば一晩くらい過ごせなくはないという状況です。過ごしやすい季節だったことも幸いし、換気用の窓を開ければ空調無しでも許容範囲内で、他の乗客も文句を言うでもなく、黙って過ごしています。そのうち、列車はソフィアからおよそ3時間で、プロヴディフに到着。


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プロヴディフはブルガリア第二の都市で、しばらく停車します。ここで後ろ4両の座席車を切り離します。


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プロヴディフから更に2時間ほどで、列車はブルガリア側最後の駅、スヴィレングラトに到着。時間は深夜0時頃、この駅で出国審査が行われます。まずは国境を越えない国内利用客が先に下車します。


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国境越えの乗客はそのまま車内で待機。ホームの反対側には鉄条網も設けられ、少しばかり国境駅らしい雰囲気はあります。


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出国審査は、係官がパスポートを回収し、事務所でまとめて審査・押印が行われる方式です。乗客は出発まで車内待機かと思っていたところ、意外にもパスポートが戻ってくるまでの間は自由にホームに出ることができます。写真を撮るのも自由です。


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ここまで連結されていた国内用客車の最後の一両も、この駅で切り離されます。


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ソフィアからこの列車を牽引してきた44型機関車は、引き続きトルコ側最初の駅、カプクレ (Kapıkule) までを担当します。


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この駅での停車時間は1時間20分程。写真も一通り撮り終えてた後、車内にもどってパスポートの返却を受け、発車を待ちます。


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列車は国境を越え、トルコ側のカプクレに到着。時刻は午前2時前ですが、乗客は一旦全員下車し、窓口に出向いて入国審査を受ける必要があります。手荷物検査も行われるため、大きな鞄も全て持って出ます。入国審査の間には車内点検もあり、点検が終わるまでは乗客は車内に戻ることはできず、屋根のないホームで待機となります。ブルガリア側と比べて随分厳しい手続きです。


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真夜中の出国審査の後、明け方の到着まであまり眠る時間もないな…などと思っていたら、カプクレ駅を発車する前に寝入ってしまい、気づくと時刻は朝の6時。そろそろ終点かと思い列車の位置を確認すると、なんとまだトルコ国内区間の半分くらいしか来ていません。カプクレでの出国審査は順調に終わったので、何故それほど遅延しているのか不明ですが、まだ到着まで2時間以上は掛かりそうです。


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ブルガリア側とは異なり、トルコ国内区間では地域輸送用の客車の連結などは行われません。停車駅はいくつかあるので、国内区間だけを乗ろうと思えば乗れるのかもしれませんが。


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結局、列車は定刻より2時間ほど遅れて、終点のハルカル (Halkalı) に到着。よく遅れる列車だとは聞いてましたが、今回も程々に遅れました。


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トルコ側での牽引機は最新鋭のE68000型機関車。最初の8両が韓国・現代ロテム社で製造された後、以降の増備車はトルコ国内でライセンス生産されています。この車両はトップナンバーなので韓国製のようです。


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ハルカル駅はイスタンブールの街外れにあり、中心部までは近郊電車「マルマライ」に乗って、更に30分程移動する必要があります。かつて国際列車が発着していた、イスタンブール中心部のシルケジ (Sirkeci) 駅まで直通運行を復活させる計画もあるようですが、今のところまだ具体的な計画は発表されていません。


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