海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

title

title

HOME   >   ヨーロッパ   >   flag ブルガリア

セプテムブリ - ドブリニシュテ狭軌鉄道

[2024年5月]

ブルガリアに唯一残るナローゲージ路線、「セプテムブリ - ドブリニシュテ狭軌鉄道」に乗車してみます。軌間は「ボスニアンゲージ」と呼ばれる760 mmで、総延長は125 kmもあり、全区間を乗り通すには片道約5時間を要します。近年ブルガリア国鉄 (BDZ) は、この路線に「ロドピ山脈狭軌鉄道 (ロドプスカタ・テスノリネイカ Rodopskata Tesnolineyka) 」という愛称を付け、観光路線としてアピールを図っています。

01.jpg
起点はブルガリア中部の地方都市、セプテムヴリ (Septemvri)。首都ソフィアからは列車で2時間ほどの距離です。駅舎は目下改修中。


02.jpg
駅舎の正面出入口は工事で封鎖されているため、中に入るには一旦駅舎の脇を迂回してホームに入り、ホーム側の出入口から入ります。改修中ながら切符売場は通常営業中。


03.jpg
セプテムブリは、首都ソフィアとブルガリア第二の都市プロヴディフ (Plovdiv) を結ぶ幹線の途中に位置しており、この駅からは都市間列車とナローゲージのローカル列車の両方が発着します。次に出発するナローゲージの列車は、12:40発のドブリニシュテ (Dobrinishte) 行きKPV 16103列車。列車種別の「KPV (КПВ)」とは、「近郊旅客列車」を意味する「クライグラツキ・プトニチェスキ・ヴラク (Kraygradski patnicheski vlak)」を表しています。


04.jpg
幹線用ホームとナローゲージ用ホームはやや離れていますが、線路自体は隣接しており、幹線用ホームのからは緑色の小さなナローゲージ用車両の姿も見えます。


05.jpg
遠目の留置線には、数多くの休車状態の客車たちの姿も。


06.jpg
幹線用ホームから繋がる地下通路を通って、ナローゲージ用のホームへ出ます。駅本屋とは別に、こちらのホームにも駅員詰所と乗客用待合室、トイレなど一通りの設備が整ってます。今日は気候も良いので、待ち客は皆、外のベンチで列車を待っています。ハチが多いのがやや難点。


07.jpg
裏手には旧型客車の姿も。古めかしい見た目の割に状態はかなり良さそうですが、どうも観光列車向けの保存車両のようです。


08.jpg
ナローゲージらしい小ぶりな客車の4両編成が入ってきました。この列車に乗ります。客車をホームまで牽いてきた機関車はどこかへ行ってしまい、客車だけが残されています。


09.jpg
客車の様子を外から観察してみます。連結部には幌はなく、手すりと渡り板のみ。列車走行中も乗客の往来は可能です。


10.jpg
行き先表示。途中の主要駅は、ヴェリングラト (Velingrad)、バンスコ (Bansko) など。


11.jpg
現在使用されている客車は、観光用の特別車両を除くと、基本的にこの形式のみ。1972年から74年にかけて、ブルガリア国内のドリャノヴォ (Dryanovo) にある「アンドレイ・ジダーノフ車両工場」で製造されたもので、全長は13.49 m (13.40 mと表記されているものもあり)。最高速度は70 km/hです。


12.jpg
牽引機がやってきました。これから連結作業です。


13.jpg
牽引機は、旧西ドイツのヘンシェル (Henschel) 社製75型ディーゼル機関車。1965年に10両が製造されましたが、現在稼働中のなのは3両ほどです。この形式の他には、ルーマニア製の77型機関車が4両在籍しています。昔と比較して輸送量が減少したため、両形式共に廃車や売却等で総数を減らしています。


14.jpg
連結作業を見届けた後、客車内に入ります。車内には1+2列の座席が並びます。製造時からは座席が取り換えられている様子で、間隔も広く居住性は良好。最近の要望に応じてか、窓下にはコンセントも設けられています。乗客は観光客風と地元客風の方々がそこそこおり、「空気輸送」とは言えない程度に席が埋まります。


15.jpg
セプテムヴリを発車した列車は、しばらく平地を走行した後、ほどなく山岳地帯に入っていきます。


16.jpg
途中駅では廃車された貨車も留置されています。この線での貨物輸送は2002年まで行われていました。


17.jpg
列車は川沿いの渓谷区間へ。急カーブや速度制限区間が連続し、列車はゆっくりとした速度で走っていきます。


18.jpg
現在は一日4往復の旅客列車が運行されるのみの当路線ですが、途中の交換可能駅には今も駅員が常駐しており、列車の発着のたびに安全確認を行っています。


19.jpg
信号機は腕木式も使われています。途中の交換可能駅では両方向からの列車同時進入ができないようで、対向列車がホームに停車するまでは、駅の手前の待機場所にてしばらく待機します。


20.jpg
途中駅でセプテムブリ行き上り列車と行き違い。


21.jpg
セプテムヴリから1時間半ほどで、沿線最大の街、ヴェリングラトに到着。多くの乗客が入れ替わります。セプテムヴリからずっと山岳地帯を走るわけではなく、途中で開けた街並みに入ったり、車窓は変化に富んでいます。


22.jpg
列車は市街地を抜け、再び山岳地帯へ。元駅舎だったと思しき廃墟がある駅も。この先、列車はループ線が連なる険しい区間に入っていきます。


23.jpg
2020年に開業したというストヤン・ミトフ (Stoyan Mitov) 駅。ループ線の途中にある、周囲に道路もない山中の秘境駅で、新しめの駅舎に古ぼけた便所、一両分しかないホームなど、色々と謎が多い駅です。


24.jpg
ループ線が連続する区間の間には、また少し開けて、立派な交換可能駅があったり。列車を降りてしばしの小休憩。


25.jpg
しばしば目にする、かつて交換可能だったと思しき駅。今は無人化された立派な駅舎が寂しさを誘います。


26.jpg
残雪を頂く山々が見えてきました。終点付近のバンスコやドブリニシュテはスキーリゾートで有名な街で、この路線も案外と冬期間の方が観光需要があるのかもしれません。


27.jpg
終点の二つ手前の駅、バンスコ。最後の有人の途中駅です。終点まではあと10分ほどの距離ですが、交換列車もないのに余裕時分が取られており、10分程停車します。


28.jpg
かつて使用されていた蒸気機関車用の給水塔と蛇口。当路線においては、蒸気機関車は75型ディーゼル機関車が導入された1965年頃まで使用されていました。


29.jpg
終点のドブリニシュテには、ほぼ定刻に到着。途中駅では対向列車の遅れで多少の遅延はありましたが、余裕時分のおかげもあって、実際には若干早着気味での到着です。約5時間という長旅でしたが、最後まで飽きも疲れも感じさせない楽しい行程でした。


30.jpg
ドブリニシュテ駅の駅舎。駅の周囲には何もありませんが、5分程歩くと街の中心部に出られます。


≪  前の記事へ    -    flag ブルガリア    -    次の記事へ  ≫


home

CONTENTS