タイ国鉄東本線・チャチューンサオ行き客車列車
[2011年10月]
バンコクから東本線の列車に乗って、チャチューンサオ (Chacheongsao) まで往復してみます。チャチューンサオは、東のカンボジア国境に向かうアランヤプラテート (Aranyaprathet) 行きの路線と、80年代に建設された南のバーンプルタールアン (Ban Pluta Luang) へ向かう路線とが分岐する駅で、貨物輸送の要衝となっています。旅客列車についても、この駅折り返しの列車が数多く運行されており、タイの鉄道のなかでも比較的利便性の高い区間となっています。
バンコク駅に停車中のチャチューンサオ行き367列車。アルストム製ディーゼル機関車牽引の客車列車です。
この列車の客車には、主にステンレス製のBTC600形が使用されています。強烈な違和感がある外観ですが、もともとはオーストラリアのクイーンズランド鉄道の近郊列車 (シティトレイン) で使用されていたSX形というステンレス製客車で、中古で譲り受けたものを改造して使用しています。高い位置にある従来の両開式乗降扉を閉鎖し、低床ホーム用に車端部に新たな乗降口を設けています。
列車の両端部だけ、国鉄10系似のBTC1000形が連結されています。「元オーストラリア車」BTC600形はだいたいこのような形で編成が組まれることが多いので、機関車と直接連結しないようになっているのかもしれません。またBTC600形にはトイレの設置もないため、それを補う意味もあるのかも。
機関車次位の、BTC1000形客車に乗車します。今回乗車したのは、BTC1000形の中でも、初期に製造された日本製の車両で、後期形と外観は大差ないものの、車内は2-3列席となっており、少々狭苦しさを感じます。
バンコクを発車した列車は、バンコク中心部に近いゴミゴミした区間を抜け、郊外のフアマーク (Hua Mak) 駅に到着。ここから路線は、一気に単線から三線区間に変わります。
この先チャチューンサオまでの区間では大規模な近代化工事が行われており、増設された線路は規格も高く、列車はスピードを上げて走ります。ただ、ジョイント音が聞こえなくなるので少しさびしい気もします。
市中心部の老朽化した駅設備とは打って変わって、近代化区間では橋上駅舎の姿も。
スワンナプーム国際空港へ向かう空港連絡鉄道「エアポート・レール・リンク」が大きくカーブし、東本線をオーバークロスして空港へ分かれていきます。
フアタケー (Hua Takhe) 駅に到着。このところタイで大きな被害を出している水害は、このあたりまで迫っており、駅の目の前はすでに池のような状態となっています。
ところどころ線路際まで水が迫り、一部の引込み線は既に水没したところもありますが、この時点ではとりあえず本線には被害は出ていないようで、列車は快走を続けます。
バンコクから約1時間半、終点のチャチューンサオ分岐駅に到着。この駅では、タイ内陸部と臨海地区とを結ぶ貨物列車が、方向転換のため機関車の付け替えを頻繁に行っています。帰りの列車を待つ間にも、新たに貨物列車がやってきては、機回し作業を行っています。
チャチューンサオ分岐駅の駅前風景。古い蒸気機関車が展示されています。
帰りのバンコク行き368列車は、やはり乗ってきた列車がそのまま折り返すだけ。せめて往路とは違う「元オーストラリア車」のBTC600形のほうに乗ってみます。
BTC600形の車内。車内中央部の転換クロスシートと、ドア付近のロングシートとを組み合わせたセミクロスシート構造です。基本的にオーストラリア時代の内装をそのまま使用しているようです。乗り心地は悪くありません。
帰路は反対側の席に座って異なる車窓を楽しみます。写真のこの駅は、チャチューンサオから二つ目のクローンバーンプラ (Khlong Bang Phra) 駅。有人駅です。
近代化区間では、駅舎の立替も同時に実施したようで、ほぼ同じ構造の駅舎ばかりが続きます。もう少し駅毎に変化を持たせても良かったのではという気がします。こちらの駅は無人駅で、駅舎は荒れ放題。窓ガラスもすべて割られており、ちょっと可哀想です。
バンコク・フアランポーン駅に到着。折り返しの待ち時間を含めた総所要時間は4時間程度で、手軽な小旅行としてはまずまずの行程です。