ウラジオストクの空港連絡列車「アエロエクスプレス」
[2020年1月]
空港連絡列車「アエロエクスプレス」に乗って、空港へ向かいます。アエロエクスプレスはもともとモスクワの3空港への連絡列車を運行していた会社名およびブランド名で、2012年のソチ (Sochi) を皮切りに他都市での事業に進出、同年にウラジオストク (Vladivostok)、翌2013年にはカザン (Kazan) で空港連絡路線を開業させました。しかしモスクワ以外の3都市の路線はいずれも利用が低調で2015年には早々と事業売却。ウラジオストクの路線ではその列車名だけを残し、ロシア鉄道系の地域運行会社によって細々と運行されています。
アエロエクスプレスのウラジオストク駅は、従来の駅舎の隣に専用の駅舎が設けられています。これだけでも開業時の意気込みが伺えますが、早々と事業売却に至ったのは残念なことです。
アエロエクスプレスの車両は、一般の近郊電車「エレクトリーチカ」と同じ塗色ですが、優等座席が設けられており、車両は一応専用化されています。形式は標準型交流電車ED9形の一種、ED9M形。旧ソ連時代はラトビアのリガで一手に担われていた電車製造を、ソ連崩壊を機にロシア国内生産へと移行することになり、その際に開発された形式の一つがED9形です。そのうちED9M形は2000年以降に製造された比較的新しいグループです。
専用駅舎の内部。ウラジオストク駅の従来の駅舎と同じく、3階に入口があり、1階のプラットホームまで降りていく構造です。2階には大衆食堂 (スタローバヤ) も入居していますが、駅舎内からは入ることができず、食堂専用の入口が別の場所に設けられています。
プラットホームも専用化され、駅舎の1階に直結しています。
2012年の開業当初は10往復程運行されていましたが、現在の運行本数はわずかに5往復。比較的規模の小さなウラジオストクの空港とは言え、せめて1時間に1本程度の列車本数がないとあまり使い出がありません。空港は市内から遠く離れているため、鉄道のアクセスは結構貴重なのですが、利用者が少なすぎて列車を増やせず、利便性が悪いので利用者も増えず、といったところです。
普通車の車内。優等座席を除けば普通のエレクトリーチカとほぼ同じ設備です。
アエロエクスプレスは途中区間ではエレクトリーチカの補完的な役割を担っており、結構多くの区間利用客があります。しかし、空港行き路線が分岐するアルチョーム (Artem) を過ぎると車内は閑散とし、アクセス利用客の少なさを実感します。なおアルチョームを過ぎると、運賃が3倍近くに跳ね上がります。
アルチョームから分岐した空港行き路線は、新たに建設された高架区間となっています。新線区間はわずか数キロとは言え、それなりに投資が掛かっています。
ウラジオストクから54分で終点のクネヴィチ空港駅 (Aeroport Knevichi) に到着。バスだと1時間以上、暴走タクシーだと40分程度の距離で、所要時間の面では遜色はありません。
真新しい駅舎は閑散としています。せっかく立派な設備を造ったのだから…という訳でもありませんが、もう少し本数を増やしてもらうと本当にありがたいところです。警備員があちらこちらに配置されており、長居していると怒られそうな雰囲気のため、早々に立ち去ることにします。