カトヴィツェ ~ ボフミーン ~ オストラヴァ : 普通列車で国境越え
[2016年5月]
ポーランド南部の街カトヴィツェ (Katowice) から、普通列車に乗って国境を越え、チェコのオストラヴァ (Ostrava) へ向かいます。
カトヴィツェはポーランド南部を代表する工業都市。豊富な地下資源を背景に、周辺には多くの工業都市が連なり、カトヴィツェを中心とした人口200万人の「上シレジア都市圏」を形成しています。都市圏をカバーする広大な路面電車網も存在し、その総延長は200 kmにも及ぶ世界有数の規模を誇っています。
完成して間もない新駅舎を擁するカトヴィツェ駅。この駅から出発です。
9:52発のチェコのボフミーン (Bohumín) 行き普通列車に乗って国境を越えます。ポーランドの鉄道では上下分離とオープンアクセスが進んでおり、この地方ではシロンスク鉄道 (コレイェ・シロンスキェ Koleje Śląskie) が地域輸送を担っています。長距離列車を運行する「PKPインターシティ」とは会社が異なり、駅で切符を購入する窓口も別々です。
乗車するボフミーン行き普通列車。ポーランドで数多く使われている、パファヴァグ (Pafawag) 製のEN57系という電車で、1M2Tの3両編成です。中間車が電動車で昔ながらの吊り掛け駆動です。1960年代から30年以上に渡って1400編成以上が製造されたとのことで、ワルシャワ周辺でもまだまだ活躍している形式です。落書きが痛々しく可哀想な感じがします。
各車の客室は2か所のデッキで3区画に分かれています。空席は多いですが、窓の落書きが邪魔で眺めが良い席はあまり多くありません。吊り掛けのサウンドを楽しみたい向きには、中間電動車の車端側の区画をお勧めします。結構うるさいです。
列車はカトヴィツェを定時に出発。森の中の路線を駆け抜けていきます。
列車は国際特急列車が行き交う幹線から離れ、単線の裏道 (?) のような路線を通っていきます。カトヴィツェ周辺は多くの都市が連なるため鉄道の路線網も結構複雑。「国際普通列車」のこの列車も、ローカル線を回って地域交通の一端を担っています。
途中駅での乗降は結構あります。国境越えを目的としてカトヴィツェから乗り通す乗客はほとんどいません。
カトヴィツェから1時間半ほどで、ポーランド最後の駅、ハウプキ (Chałupki) に到着。次の駅が終点のチェコのボフミーンです。両国ともシェンゲン圏で国境審査は無いので、そのまま乗り通します。
ハウプキから終点のボフミーンまでは6分ほど。あっけなく国境越えは終了し、チェコ入国です。規模の大きなボフミーン駅ですが、ポーランドからの普通列車は駅の端っこの短いホームに遠慮がちに停車します。どうやらこのホームがポーランド行き普通列車の定位置のようです。
国境の街、ボフミーンの駅舎。駅周辺は住宅地で、これといった見どころはなさそうです。
ここからはチェコ国内の旅。旧東欧圏ではユーロ導入国が少なく、国境を超えると通貨も変わります。駅の窓口でも通貨の両替をやっているようです。
列車待ちの間、ホームに入って列車見物。レールバスのような単行のディーゼルカーが入ってきました。810型と呼ばれる二軸車で、チェコのヴァゴーンカ・ストゥデーンカ (Vagónka Studénka) により製造されました。
ホームに並ぶ客車列車。ボフミーンはポーランドとの国境の駅というだけでなくチェコ東部からの路線も分岐する交通の要衝で、多方面からの列車が発着します。一部のスロバキア行き国際列車もこの駅を通ります。
この車両は珍しい…のかどうか判りませんが、事業用車両もやってきました。見た感じは上記の810型をベースにした架線保守用の車両のようです。
オストラヴァ行きの普通列車。こちらの列車に乗車します。「シティ・エレファント」という愛称がついた2階建て電車、チェコのシュコダ (Škoda) 製、471系です。
先頭車の2階が一等車になっています。一等車は2+1の3列席、二等車は通常の2+2の4列席です。私の切符は二等なので、一瞬だけ見学して二等車に移動します。
オストラヴァ中央駅 (オストラヴァ・フラヴニー・ナードラジー Ostrava hlavní nádraží) にはわずか一駅、10分ほどで到着。チェコ入国後の初の鉄道乗車はあっという間に終了です。
オストラヴァ中央駅の駅舎。中央駅とはいっても街の中心部からは少し離れており、駅前は比較的静かです。
駅前には路面電車が乗り入れており、駅のすぐ前に方向転換用のループ線があります。使われている車両はチェコのČKDタトラ (ČKD Tatra) 製の車両です。
隣にはトロリーバスも。オストラヴァはチェコ第三の都市ですが、今回は乗り継ぎで立ち寄っただけであまり時間もなく、路面電車もトロリーバスも見るだけで終わりです。