ウランバートル発サインシャンダ行・長距離普通286列車
[2008年8月]
モンゴルの首都ウランバートルから、南部のゴビ砂漠にある街サインシャンダ (Sainshand) まで、列車で行ってみます。サインシャンダまではおよそ500 km。各駅停車の客車列車・286列車に乗って、片道約10時間の旅です。
旅の出発地のウランバートル駅。改札口はなく、列車が運行されている時間帯は自由に構内に出入りできます。飲み物やお菓子、カップラーメンなどを売っている屋台があり、ここで旅の準備を整えます。
これが今回乗車する、9時50分発サインシャンダ行き286列車。旧共産圏らしい緑色の客車です。曜日によっては、途中で分割される付属編成が連結されることもありますが、この日は荷物車1両を含む計12両から成る基本編成のみです。残念ながら食堂車はありません。
牽引するのは、旧ソ連圏でおなじみの、そしてモンゴル国鉄 (MTZ) の主力機でもある2M62形ディーゼル機関車。重連タイプの大型機関車です。
重連といっても連結面側には運転台はないため、EH500形のような2車体連結方式といった方が良いのかもしれません。
こちらが今回乗車する、4人用コンパートメント車。寝台車を座席として利用しますが、実際には車掌から貸しシーツ (500トゥグリク、約50円) を借り、寝台に寝転がって過ごすのが一般的のようです。私もそうします。
乗車口には各車に車掌が2名ずつ。乗車券を見せて乗車します。
列車はウランバートルを定刻の9時50分に発車。しばらくはウランバートルの街並みが続きますが、すぐに人家はまばらになっていき、モンゴルらしい草原地帯に入っていきます。
客車には石炭式湯沸かし器、ロシアで言うところのサモワールも設置されています。お茶などが飲みたい時は、車掌に頼んでお湯を分けてもらいます (有料)。最近はカップラーメンを作って食べる人が多いようです。ラーメン一杯分のお湯は100トゥグリク (約10円)。
モンゴルの草原地帯というと、何もない広い草原が広がっているというイメージがありますが、実際には小高い丘が多く、線路はそれを迂回したり、勾配を上ったりするため、かなり蛇行しています。そのため、列車の窓から牽引機の姿を見たりすることも可能です。
人口密度が低いため、途中駅もほとんどないのかと思えば、さにあらず。実際には15分~30分おきに駅に停まります。全線単線のため、交換設備を数多く設ける必要があったためでしょうか。実際、旅客列車の本数は多くありませんが、貨物列車とは比較的頻繁に行き違います。
草原地帯を抜けると、一面に砂が広がる砂漠地帯に入っていきます。ちょうど日が高くなる時間帯で、気温も上がり、窓を開けていないと暑くてたまりません。しかし窓を開けると今度は大量の砂埃が車内へ。難しい選択ですが、砂埃を我慢して窓を開けるしかありません。
ウランバートルから5時間あまり、サインシャンダまでの道程でほぼ中間地点となる、チョイル (Choir) に到着。チョイルはウランバートル~サインシャンダ間で一番大きな都市で、ゴビスンベル県の中心都市でもあります。列車は20分あまり停車します。
チョイル駅の駅舎。モンゴル風、というのか良くわかりませんが、立派な駅舎です。
乗客達は停車時間にホームに出て、つかの間の休息を取ります。ホームの屋台には、飲み物などのほか、地元の人が自宅で作った料理なども売られており、乗客達も長旅のお供を買い込みます。
列車はさらに砂漠地帯を走り、ボル・ウンドル (Bor-Öndör) への支線が分岐するアイラグ (Airag) に停車。こちらは町の規模が小さいためか、駅舎もこぶりです。
アイラグは、チョイルとサインシャンダのほぼ中間にあり、ここまでで全行程の約4分の3を終えたことになります。列車はまた20分ほど停車します。
列車はアイラグを発車。写真の中央付近にボル・ウンドル方面の支線が分岐していくのが見えます。残りの旅はあと4分の1です。
このあたりになると、駅名に固有名詞すらついてないこともあります。この駅は「第29駅」という名前です。
さらに列車が進むと、砂漠には少しだけ緑が増えてきます。同じコンパートメントにいた、サインシャンダに帰省するというウランバートル在住の女子大生によれば、今年は珍しく雨が多く、草がよく育っているとのこと。列車は最後の停車駅に停車。終点サインシャンダまではもう一息です。
まもなく日も沈みます。一日の終わりとともに、旅も終わりに近づいています。
ちょうど日が沈んだころ、定刻20時00分に終点サインシャンダに到着。約10時間の長旅、お疲れ様でした。
この列車はこのまま1時間後に折り返し、ウランバートル行き寝台鈍行285列車になります。駅を後にし、今晩の宿に向かいます。