フェズ ~ マラケシュ : モロッコの二大世界遺産都市を巡る
[2017年5月]
モロッコの世界遺産都市として名高いフェズ (Fès) とマラケシュ (Marrakech)。この二都市間を列車で移動します。所要時間は約7時間半です。
フェズ発10:40の列車に乗車します。フェズ ~ マラケシュ間の直通列車は一日に八往復。夜中の2時半に発車する夜行列車なども含め全て座席列車です。二都市を結ぶ寝台列車があれば、観光客の需要があるように思います。
発車の30分ほど前には改札は開かれ、ホームに入って列車を待ちます。ここフェズを境に、ベニ・アンサール (Beni Ansar)、ウジダ (Oujda) 方面は単線非電化、カサブランカ、マラケシュ方面は複線電化となっています。
入換機に牽かれて列車が入線。
牽引機は、ゲンコツスタイルで有名なフランス・アルストム製BB7200型のモロッコ版、E-1300型電気機関車。姉妹形式として貨物用に歯数比を変えたE-1350型もあります。客車は一等車2両、二等車7両、電源車1両の10両編成です。モロッコの鉄道には食堂車はありません。
一等車に乗車します。2両連結された一等車はどちらもコンパートメント式です。乗車2日前に現地で切符を購入しましたが、モロッコでは前もって切符を買う人が少ないのか、当たった席は1号車のトップナンバーです。しかし、係員に「1号車はこっち」と言って案内されたのは2両目の車両。それ本当? とも思いながらも、号車札がどこにもないので確かめようがなく、言われるがままに2両目に乗車します。
一等コンパートメントの室内。ソファを思わせる重厚な横3列シートで、前後の間隔も広く、居住性は上々です。同室はアラブ系旅行者のカップル。
私の座席は通路側。通路との仕切りは全面ガラス張りで、窓側席ほどではないにしても、程よく車窓は拝めます。ただ扉のロックが緩く、列車がブレーキを掛けるたびに勢いで扉が開いてしまいます。
フェズを定時に出発した列車は、ほどなく世界遺産の古都メクネス (Meknes) に到着。フェズ出発時点では二等車にも余裕がありましたが、途中駅からの乗客は結構多く、だんだんと車内は混雑していきます。一等車はあまり客の出入りは多くありません。
この列車には車内販売があります。金具で手すりをキンキンと叩いて、コンパートメント内の乗客に近づいたことを知らせながら車内を回っています。お菓子や飲み物の他、軽食としてサンドイッチが売られていますが、サンドイッチはすぐに売り切れてしまうようなので、見つけたら即買いをおすすめします (途中駅での補充もあります)。
複線電化の幹線だけあって、列車も快調に飛ばします。
ケニトラ (Kenitra) が近づいてきたところで、建設中の高速新線と合流します。タンジェ (Tanger) ~ ケニトラ間を結ぶ、アフリカ大陸初の高速鉄道で、TGV方式が採用されています。工事はまだ完成していませんが、車両は既にモロッコ国内に搬入されており、既に一部区間で試運転が行われています。
ケニトラ・メディナ (Kenitra Medina) 駅に停車中。ケニトラ ~ ラバト ~ カサブランカ間を中心に活躍している、イタリア・アンサルドブレダ (AnsaldoBreda) 製の二階建て電車が停まっています。近代化が進められているモロッコの鉄道、駅も車両も新しいものばかりです。
この駅でも何やら工事中。高速鉄道対応の工事かと思われます。
首都ラバト、最大都市カサブランカといった主要都市を過ぎ、列車の旅も終盤。カサブランカから先はまだ単線区間がかなり残っていますが、近代化工事の一環で多くの区間で既に複線化工事が着工されており、ところどころ建設中の路盤が見られます。このあたりは列車本数が比較的少ないためか、一等車は当初よりも混み合っています。私がいるコンパートメントにも元気なお子様が乗ってきて、一気に騒がしくなります。
途中では最大で30分ほど遅れがでていましたが、最終的には少し回復し、終点マラケシュには15分ほどの遅れで到着。マラケシュ駅はモロッコの南の終点で、ホームも頭端式となっています。
牽引機はフェズからずっと同じE-1300型。
真新しさが漂うマラケシュ駅の駅舎は2008年に完成したものです。中央にホールがあり、両脇に店が並ぶ構造はフェズ駅と似通っています。規模はマラケシュの方が一回り大きいようです。
時刻は夕方の6時半。長旅の疲れもありますが、まだ日没まで時間もあるので、せっかくの世界遺産都市をこれから少々探索してみることにします。