海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

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南大東島・シュガートレインの廃線跡をゆく

[2012年11月]

沖縄本島から東へ約400 km、太平洋に浮かぶ絶海の孤島、南大東島。この周囲約20 kmの小さな島にはかつて、全長30 kmもの鉄道路線が張り巡らされていました。島で栽培されているサトウキビを運搬するために、沖縄で初めて敷設された鉄道で、全線が軌間762 mmのナローゲージ。島の開拓が始まった1900年代初頭から使用されていましたが、サトウキビ輸送がトラックに切り替えられた1983年に廃止されました。今でも一部に残る廃線跡を見るため、遠路はるばる、南大東島を訪れてみることにします。

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島へのアクセスは、那覇からの船便 (片道15時間) か、同じく那覇発の空路 (片道1時間) のいずれか。船便は、港でのクレーンを使った乗降など、旅情満載な点も大変魅力的ではありますが、週1-2便と運行頻度が少なく、スケジュールも立てにくいため、今回は往復とも空路を選択します。この空路も今でこそ比較的容易に利用可能ですが、1997年に機材が大型化される以前は、定員が少ない小型機が運行され、切符を入手するのも結構大変だったようです。


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島の宿で自転車を借り、廃線探索に出かけます。島は意外と起伏が大きく、運動不足の身には結構つらい修行です。宿においてあった島の観光マップによれば、現在でも線路跡が見られるのはわずか数箇所。そのマップに記載されているポイントを順に見て回ります。こちらは島の北東部にある線路跡。


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道路と交差する踏切部分は比較的きれいに残っているものの、それ以外の部分は軌道跡を含めてほぼ原型を留めていないようです。廃線跡をたどって歩いていくというのも相当に困難な様子。


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同地点の反対側。こちらも線路跡はすぐに追跡困難となります。


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こちらは島の南東部にある線路跡。線路跡は防風林として利用され、この近辺だけはかろうじて線路跡を辿っていくことができそうな感じです。


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防風林の下にはまだレールが残っているのでは?と期待させられますが、実際はどうなのでしょうか。望み薄かも。


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上記地点に程近い、別の踏切部分。こちらも線路が延びる先は防風林となっています。島を高台から見下ろすと、このような防風林が島じゅうに張り巡らされているのが見えますが、そのほとんどは鉄道とは無関係です。


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島中心部付近にある、大東製糖の工場の裏手にある橋桁跡。レールはありません。


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工場の近所に放置されたレール。


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地面に突き刺されたレール。廃線から20数年も経つと、見つかる痕跡も非常に限られたものになってしまうようです。


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こちらは島の南西部にある、廃線跡を転用した遊歩道「フロンティアロード」。廃線跡らしい廃線跡の光景ですが、整備されているのはごく僅かな区間に限られています。


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一方、島の中心部にある「ふるさと文化センター」には、かつて島で使用されていた貴重な車両たちが、いまでも保存されています。


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こちらは初期に活躍していた2号蒸気機関車。1907年、雨宮製作所製。


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二軸の小型客車。鉄道自身はサトウキビ輸送専用の貨物鉄道でしたが、島民の便宜を図るため、旅客輸送も行っていました。


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後期に活躍していた、日本車両製8号ディーゼル機関車。1975年製とのことで、83年の鉄道廃止まで、わずかな期間しか活躍できなかったことになります。


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8号機関車には、日本車両の銘板も残ります。


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サトウキビ運搬用の貨車。このような貨車が何両も従えた貨物列車が、島内を行き交っていたのでしょう。


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展示スペースには、鉄道の概略が記された看板も設置されているほか、ふるさと文化センターの建物内には、鉄道が現役時代だった頃の貴重な写真もいくつか展示されています。


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最後にいくつかおまけの写真を。こちらは1997年に廃止された、南大東島空港の跡地。廃線跡に比べると、廃空港跡というのは珍しい存在です。新空港の開業によって、上述の通り大型機 (といっても定員39名ですが) の就航が可能となり、島へのアクセスが容易になりました。


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現在、旧空港の建物跡は、島特産のラム酒工場となっている他、滑走路後にはアパートがいくつか建てられています。ちょっと広めの駐車場跡にも見え、前もって言われないと廃空港跡だとは気づかない光景です。


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おまけその2。こちらは南大東島の隣にある、北大東島の風景。島西部の西港にある、リン鉱石貯蔵庫の跡です。北大東島には、南大東島のようなサトウキビ鉄道はありませんでしたが、このリン鉱石貯蔵庫には、港での積み下ろしのためのトロッコ軌道があったとのこと。


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これがそのトロッコ軌道の跡…でしょうか。いずれにしても、痕跡は僅かしか残っていないようです。


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防波堤の無い簡素な港では、海は常に大荒れ。北大東島には北、西、南の3箇所に港があり、その日ごとに一番波が穏やかな港を選んで使用しています。波が激しい港はすぐに閉鎖されてしまうため、西港の構内にあるリン鉱石貯蔵庫跡も、入れるかどうかはその日の運次第だったようです。絶海の孤島の厳しい環境が垣間見えます。


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