海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

title

title

HOME   >   flag 日本国内

線路の上を自転車で走ろう・旧神岡鉄道廃線跡「ガッタン・ゴー」

[2013年11月]

岐阜県を走っていた第三セクターの神岡鉄道は、2006年に惜しまれつつ廃止されましたが、現在はその廃線跡を利用して、レール上を自転車で走ることができるという「レール・マウンテンバイク」なる珍しいアトラクションが行われています。自転車で線路を走るのがどれほど楽しいものなのか、廃線跡探訪も兼ねて挑戦してみることにします。

01.jpg
基点となるのは、旧神岡鉄道の終点であった奥飛騨温泉口駅跡。当時の駅舎がそのまま「レール・マウンテンバイク」用の設備として使用されています。神岡鉄道の現役時代は、駅前にディーゼル機関車が展示されていましたが、現在は撤去されています。少々不便な場所ではありますが、奥飛騨温泉郷の温泉巡りと組み合わせて訪れてみるも良いかもしれません。ただし休日は人気が高いので、早めの事前予約は必須。私もこの日は、朝一の最初の便しか予約が取れませんでした。


02.jpg
駅構内の設備も現役時代のものをほぼそのまま活用しています。自転車の乗降を行う部分だけ、プラットホームと同じ高さの木製の台が設置されています。


03.jpg
木製の台で自転車に乗り、スロープを下って本物の線路上に降りるという仕組みです。


04.jpg
こちらが実際に乗る自転車。専用の台枠に市販の自転車を組み合わせたもので、台枠についた案内用車輪でレール上での位置を固定し、レールに接地した自転車のゴムタイヤで前に進む仕組みです。ハンドルは動かないように固定されています。写真の2人用電動自転車タイプの他、体力に自身がある人向けの電動ではない普通自転車タイプ、家族向けに子供用席が付いたタイプなどがあります。


05.jpg
参加者は、1時間毎に区切られた枠内に数組が同時参加するという仕組みで、同一枠の参加者はまず駅舎内に集められ、事前説明を受けます。手放し運転などは全然問題なしだそうで、写真を撮りながら運転などもできそうです。一方で途中で自転車を降りるのはNGとのこと。


06.jpg
こちらが全行程の路線図。旧神岡鉄道の中心駅であった神岡鉱山前駅までの約3 kmを往復します。途中には2つの駅跡と、トンネルや高架橋などもあり、短い距離ながら変化に富んでいます。


07.jpg
事前説明を受けて、いよいよ出発。前の人と適宜車間距離をとりながら発車します。


08.jpg
残念ながらあまりすっきりしない天気ですが、沿道には紅葉も見られ、なかなか印象的な景色です。レールのジョイント部を通るたび、車輪から「タタン」と金属音が響き、本物の列車を運転している気分になれます。


09.jpg
カーブ区間では、線路が内側に向かって傾斜しているのが実感できます。ある意味、本物の列車以上に「鉄道」が味わえるという感じです。


10.jpg
一つ目の途中駅、神岡大橋駅に到着。駅施設は現役時代そのままを留めています。降りてじっくりと観察したいところですが、前述の通り停車や降車は禁止されているので、心持ちゆっくり走って、観察しながらの通過です。


11.jpg
建物の裏手を通る、何の変哲もない区間も、レール上から見ると非日常的な景色に思えてきます。


12.jpg
途中、二つのトンネルを通ります。最初のトンネルはやや短めで、入る前から向こう側の明かりが見えています。


13.jpg
自転車のライトをつけても、トンネルの中は暗すぎて、前方の出口と足元のレール以外は何も見えません。ちょっとしたスリルを味わえます。


14.jpg
トンネルを抜けると、今度は高架橋の上にでます。進路の前方に見えるのが、二つ目の駅、飛騨神岡駅で、周囲には住宅地が広がっています。


15.jpg
高架橋を渡り終えると、またトンネル。今度のは少し長めで、しかも中でカーブしているため、結構進まないとなかなか出口が見えません。前方に何も見えないというのは、やはり多少なりとも不安になるもので、出口の明かりが近づいてくると、やはりホッとします。


16.jpg
トンネルを出ると、折り返し点の神岡鉱山前駅はもうすぐ。廃止された信号機もそのままに残され、更に気分を盛り立ててくれます。


17.jpg
神岡鉱山前駅へは、スタッフが「鉄道ファンも大喜び」と表現した、ポイントを渡って転線するという、嬉しいおまけ付き。車輪から伝わる振動の楽しさもさることながら、自分の進路がレールに沿って変わるのは、実際に体験してみると結構不思議な感覚です。


18.jpg
神岡鉱山前駅では、スタッフが自転車の方向転換をしてくれている間、しばしの休憩です。駅跡に入って見学することもできます。現役時代に旧神岡鉄道の中心駅でもあったこの駅には車庫も置かれていました。


19.jpg
車庫の中には、実際に旧神岡鉄道で使われていた気動車が今も保管されています。この車両が活躍していたのは、旧神岡鉄道が営業を行っていた期間 (1984年から2006年) と同じ22年間。路線廃止の頃はまだ十分に活躍できる状態であったであろうと考えると、少々可哀想に思えます。


20.jpg
線路はこの先、猪谷駅に向かって伸びていますが、「レールマウンテンバイク」でこの先へ行くことはできません。この先の区間には長いトンネルや川を渡る橋梁があり、安全性への懸念から自治体の許可が下りないとのこと。ただし、引き続き延伸へ向けて検討は続けられているようです。やはり、折角なら全線乗り通して見たいところです。


21.jpg
さて、折り返し準備も終わったところで、やってきた道を引き返して奥飛騨温泉口駅へもどります。


22.jpg
往路はあまり意識することはないのですが、実際には奥飛騨温泉口から神岡鉱山前にかけてゆるやかな下り坂となっており、帰りはひたすら登りとなります。ここで本領を発揮するのが電動自転車で、おかげで帰路も楽々。「電動で良かった」と有難みを痛感します。ちなみに、このとき同時に参加していた他の参加者も、全員電動自転車を選択していました。


23.jpg
基点の奥飛騨温泉口駅に戻って、行程は終了。スタッフの合図に従って、坂を駆け上がったところでゴールです。往復の所要時間は約40分で、行程の分量や事前説明も含めた時間配分などが非常にバランスよく調整されていると感じます。本物の鉄道以上に鉄道を楽しむことができる、この「ガッタン・ゴー」。鉄道ファンでも、そうでない人でも、多くの人にとって非常に満足のいく楽しいアトラクションではないかと思います。


≪  前の記事へ    -    flag 日本国内


home

CONTENTS