ブダペスト ~ クルージュ=ナポカ : 国際特急「ユーロシティ」でルーマニアへ
[2019年5月]
ハンガリーの首都ブダペストから国際特急列車「ユーロシティ」に乗車、国境を越えてルーマニアに入り、トランシルヴァニア地方の中心都市、クルージュ=ナポカ (Cluj-Napoca) へ向かいます。
ブダペストの陸の玄関口、ブダペスト東駅 (ブダペシュト・ケレティ・パーヤウドヴァル Budapest-Keleti pályaudvar)。この駅から出発します。
ホームは大きなドーム屋根に覆われています。ブダペストを発着する多くの国際列車がこの駅を起終点としています。
今回乗車するのは、ウィーン発クルージュ=ナポカ行きの「ユーロシティ」EC 143列車「トランシルヴァニア (Transilvania) 号」。12時間掛けて3か国を縦断する長距離列車ながら、客車4両の質素な編成です。牽引機はハンガリー鉄道 (MÁV-Start) では最新鋭となるボンバルディア「トラックス (TRAXX)」シリーズの480型電気機関車。最高速度は160 km/hです。
この列車はウィーンからブダペストまでの区間利用者が多いようで、多くの乗客がここで下車します。この先のルーマニアとの国境まではまだまだ距離がありますが、ハンガリー国内では主要な都市は経由しないため、国内利用の需要はそれほど多くなさそうです。
ブダペスト東駅は頭端式ホームのため、この駅で方向転換を行います。機関車も別の480型機関車に交換されます。
一等車は1両のみ連結。今回はこの車両に乗車します。
残る3両は二等車。うち2両がハンガリー鉄道のもので、1両がコンパートメント式、もう1両が開放式です。
最後尾の二等車1両はルーマニア鉄道 (CFR Călători) の所属車両。車内はコンパートメント式です。
一等車の車内。コンパートメント内は3人掛けの対面式の座席です。座席間隔が広いため窮屈さはありません。車体にWi-Fiの表示がありますが、実際には稼働していないようです。乗車率は半分程度。同室の客は私と同じく終点のクルージュ=ナポカまで向かう2人連れです。
二等車の様子も見てみます。こちらはハンガリー鉄道のコンパートメント車。一等車と同じく3人掛けで、1人当たりの占有面積はあまり変わらなさそうです。開放式の二等車ともども、心なしか一等車より空いているように見受けられます。
こちらは最後尾のルーマニア鉄道の二等コンパートメント車。こちらも3人掛け。
車窓には時折菜の花畑が広がります。
ブダペストから2時間余り、ピュシュペクラダーニ (Püspökladány) に到着。ここから複線電化の本線を離れ、ルーマニア方面へと向かう単線非電化の支線に入っていきます。
機関車の付け替えのため、この駅では18分程停車します。
この先の牽引機はハンガリー地場のガンツ (Ganz) 社製の418型ディーゼル機関車。2011年の名称改正前はM41型と呼ばれていました。
曇天が続いていましたが、天気が回復してきました。
支線に入ると、列車は10分おきくらいに停車するようになります。国際列車ながら地域輸送の役目も兼ねており、支線内での乗車に限って特急料金不要で利用が可能です。一等車もいつの間にか空室のコンパートメントが増えてきました。
ピュシュペクラダーニから約1時間で、ハンガリー側の最後の駅となるビハルケレステシュ (Biharkeresztes) に到着。ルーマニアもハンガリーと同じEU加盟国ですが、この先はシェンゲン圏の外になるため、ここで出国審査が行われます。時差も1時間あります。
機関車もルーマニア鉄道のものに交換されます。車外で写真を撮っていると、出国審査の係官に車内に入るように促されます。「係官の写真も撮らないように」と注意を受けます。パスポートチェックは車内で可搬式のスキャナを用いて行われ、その場で押印されます。EU市民はIDカードの提示のみで可なので、パスポートを提示しているのは私を含めて極少数です。審査終了後は車外に出ることはできません。
国境を越えると、ほどなくルーマニア側最初の駅、エピスコピア・ビホル (Episcopia Bihor) に到着。ここではルーマニアの入国審査が行われます。ハンガリーとは異なり、係官が全員のパスポートを一旦回収し、事務所で一括して審査・押印を行う方式です。乗客はその間車内で待つことになります。審査が終わってパスポートが返却されると車外に出ることができるようになります。
ルーマニアに入って最初の主要都市、オラデア (Oradea) に到着。この先終点まで、列車はおよそ20分おきくらいにこまめに停車していきます。機関車は先のハンガリー国境の駅から64型ディーゼル機関車に変わっています。ルーマニア鉄道の最新鋭車です。
時刻は夜の8時過ぎ。サマータイムのおかげで明るさは残っていますが、だんだん日暮れが近づいてきます。
終点のクルージュ=ナポカには、定刻の22:25に到着。
ブダペストからは約8時間の長旅でしたが、なかなか快適な旅でした。
小ぶりながら瀟洒な外観のクルージュ=ナポカ駅。2020年で駅開業150周年を迎えます。建物内には売店や食堂があり、また駅のすぐ隣にはカルフールもあります。ただし今回は夜遅くの到着のためすべて営業終了。駅前で唯一空いているのは駅向かいの売店くらいです。この先まだ夜行列車に乗って旅を続けるため、売店でパンとお菓子だけ買って、駅の中で時間をつぶすことにします。