ブダペストの子供鉄道
[2016年5月]
旧共産圏諸国の多くの主要都市では、子供の社会教育を目的とした「子供鉄道」が運営されていました。国によってはほとんど廃止されてしまったところもありますが、ブダペストの子供鉄道は今も現役で、観光客の貴重な交通手段にもなっています。軌間は760 mmのナローゲージで、全長は11.2 km。運営はハンガリー国鉄 (MÁV) により行われています。
子供鉄道へは、ブダペスト中心部から路面電車→登山電車→子供鉄道と乗り継ぐのが一般的。というわけで、路面電車に乗って登山鉄道の接続駅ヴァーロシュマヨル (Városmajor) までやってきましたが、登山鉄道の入り口の門は閉まったままです。
どうやら、保線作業のため2週間にわたって平日朝と週末以外の運行が休止されているとのこと。全くもってついていません。
門の隙間から見える登山電車の車両。遠目に眺めるのが精一杯です。
仕方がないので、そのまま路面電車に乗って終点のヒューヴェシュヴェルジ (Hűvösvölgy) へ。ここから子供鉄道の反対側の終点駅へアクセスすることができます。
ヒューヴェシュヴェルジの電停から丘を登ったところに、子供鉄道のヒューヴェシュヴェルジ駅があります。
入り口に時刻表が掲示されています。平日の昼間は1時間に一本程度の頻度で運行されているようですが…。
運悪くちょうど列車が出たところでした。次の列車まで1時間待ちです。
駅から少し離れたところに車両基地が見えます。客車だけでもかなりの両数が在籍しているようです。この日は平日ですが、休日にはかなりの観光客が来訪するのかもしれません。
次の列車まで時間潰し。駅周辺は公園になっていて、遊歩道も整備されています。
折り返しとなる列車がやってきました。
列車は、ディーゼル機関車+客車2両の編成。客車は、1両は窓ガラス付き、もう1両がガラス無しの開放式です。「子供駅員」も出てきて、列車に合図を送っています。
折り返しに向けて、機回しを行います。子供駅員がポイントの近くで旗を振っています。
機関車の連結が完了。当たり前ながら「子供鉄道」とは言っても、機関車の運転や連結作業などは大人の係員が行います。
切符は発車時刻の30分前からの販売開始で、駅舎内の出札口で購入します。切符販売も子供駅員の役目で、私のような外国人に対しても、手持ちの英会話本を駆使して一生懸命応対してくれます。しかし、私が終点駅のセーチェーニヘジ (Széchenyihegy) をうまく発音できず、なかなか目的地を伝えられません。最後は、子供駅員が見せてくれた時刻表に指差しで駅名を伝え、無事に切符を購入。
乗客は10人ほど。ほとんどが開放型の客車に乗車します。子供車掌も2人乗り込み、子供駅員に見送られながら出発します。車掌は検札のほか、記念品の販売も担当します。
列車は高台の上を走っていきます。車窓からは時折ブダペストの市街地が見渡せます。
途中駅では列車の行き違いも行われます。
途中駅でも子供駅員が働いており、発車の合図を出しています。車掌も手を掲げて合図を返しますが、少々おふざけ気味の子供も。
ブダペストのハイキングスポットとして知られるヤーノシュ山への最寄り駅、ヤーノシュヘジ (Jánoshegy)。途中駅での乗客の乗降もそこそこあります。
終点のセーチェーニヘジには、約40分で到着。すぐに機回し作業が始まります。
セーチェーニヘジ駅の駅舎。登山電車の駅とは少し離れています。
登山電車のセーチェーニヘジ駅へは徒歩数分の距離。上述の通りこの日は登山電車が運休中のため、代行バスが待機しています。
一目見て分かる急勾配の線路。最大斜度は150パーミルです。
代行バスは麓まで行かず、登山電車の途中駅の前で降ろされ、ここから定期の路線バスに乗り換えます。登山電車は全長わずか3.7 kmという短い路線ですが、いくつかの途中駅があり、観光輸送だけではなく、都市交通の一端も担っています。今回乗車できなかったのが非常に残念です。