海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

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ブダペスト ~ バラトンフェニヴェシュ : バラトン湖畔を行く急行列車

[2016年5月]

首都ブダペストから、ハンガリー南西部のバラトン湖畔にある小さな町バラトンフェニヴェシュ (Balatonfenyves) まで、客車急行列車に乗って向かいます。

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出発駅は、ブダペストの西の外れにあるターミナル駅、ブダペスト南駅 (ブダペシュト・デーリ・パーヤウドヴァル Budapest-Déli pályaudvar)。「パーヤウドヴァル (時刻表などではpuと表記)」とはターミナル駅を意味し、「鉄道駅」全般は「ヴァシューターロマーシュ (vasútállomás)」と呼ばれます。南駅からはハンガリー南西部方面に向かう国内列車と一部の国際列車が発着しています。


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近郊列車や中距離の急行列車などが集う南駅のプラットホーム。広々とした構内には、一部を除いて屋根がありません。


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自動券売機で切符を購入します。この券売機はかなり優れもので、経路や乗車列車の検索、南駅発着以外の切符の発券など様々な機能が備わっています。ハンガリーの急行列車には急行券が必要ですが、発券時に選択した乗車列車に合わせて、急行券も自動で付けてくれます。今回は事前に乗車列車を調べてきましたが、なぜか券売機での検索結果はやや異なり、しかも直通列車のはずが途中で乗り継ぎとも。状況がよく判らないまま、とりあえず切符を購入します。


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乗車するのは、クロアチア国境近くのナジカニジャ (Nagykanizsa) 行きの急行854列車。急行列車はハンガリー語でジョルシュ (gyors) と言います。


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牽引機は、ハンガリーで主力機として活躍する431型電気機関車。ハンガリー地場のガンツ (Ganz) 社製で、1960年代から製造された古参機です。2011年の名称改正前はV43型と呼ばれていました。


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客車は7両編成。1両目は一等・二等合造型の客車。時刻表には「二等のみ連結」と書かれていましたが、一等車に乗車できるのかは不明です。


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1両だけ塗色が異なる二等客車。クロアチア旅客鉄道 (HŽPP) のロゴが入っています。普段はブダペスト ~ ザグレブ間のインターシティに連結されている客車のようですが、ハンガリーの国内列車に使用されることもあるようです。


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残り5両は両開二扉式の二等客車。旧東ドイツ国鉄 (DR) から購入した中古車両で、「ハルバーシュタット客車 (ハルバーシュタッティ・コチ Halberstadti kocsi)」と呼ばれています。略して「ハルビ (Halbi)」とか、東ドイツにちなんで「ホーネッカー」などとも呼ばれているようです。各車の外観は似通っているものの、自転車置場付き車両や、一等・二等合造車 (ただし一等席も二等扱い) など、編成は意外とバリエーションに富んでいます。


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両開二扉のハルバーシュタット客車に乗車してみます。車内は2か所のデッキで3区画に分かれており、それぞれがこじんまりとした居住空間になっています。乗客はあまり多くなく、客車1、2両でも十分な程度です。


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列車はブダペスト南駅を定時に発車。終点のナジカニジャまでの路線は南西に向かってほぼ一直線です。車窓には一面の農地が広がり、農業国としてのハンガリーらしい風景となります。


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しばらく行くと、進行方向右手に鮮やかなコバルトブルーの湖面が広がります。中欧最大の湖、バラトン湖です。周囲一帯はハンガリー有数の保養地となっており、夏の行楽期には国内外から多数の旅行客が訪れます。列車はバラトン湖の南岸に沿って走りますが、途中駅は「バラトン○○」という駅名ばかりで、どの駅で降りればよいのかなかなか覚えられません。


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検札に来た車掌に「『ブス』に乗り継ぎが…」と教えられ、ようやくが合点がいきました。切符購入時に券売機に表示された「乗り継ぎ」とは、途中区間が保線工事中のため、代行バスに乗り換えが必要という意味だったようです。というわけでブダペストから約1時間20分、途中駅のシオーフォク (Siófok) で乗客は全員下車し、バスに乗り換えます。


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駅前には多数のバスが停まっていますが、そこは「他の人に付いていく」という無難な方法で対応。念には念を入れ、バスの運転手に切符を見せて「このバスでいいの?」と念押しして乗車します。


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代行バスの運行区間はシオーフォクからバラトンセメシュ (Balatonszemes) まで。所要時間は約40分です。途中の駅にも停車し、乗客の乗降が行われます。バスの停車場には「列車代行 (ヴォナトポートロー) バス停車場」の表示が掲げられています。


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バスの車窓からは、まさに進行中の保線作業の様子も。


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代行バスは予定時刻より少々早めにバラトンセメシュに到着。ここから再び列車に乗り換えます。


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再び乗る列車も、シオーフォクまでの区間と同様の旧東ドイツ製ハルバーシュタット客車で構成されています。今度は一等車はありません。列車番号は引き続き急行854列車です。


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バラトンセメシュからは約30分ほどで、目的地のバラトンフェニヴェシュに到着。ブダペストからは約2時間40分で、バス代行のため本来の時刻より約30分ほど余計にかかりました。この街にやってきたのは、近くを走るナローゲージ鉄道に乗車するためですが、その様子はこちらで。


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このバラトンフェニヴェシュも、夏には多数の行楽客が押し寄せる街ですが、訪問した時期はまだ季節外れで、余り人の気配がありません。車窓からは美しく見えた湖面も、近くで見ると今ひとつな感じ。風が強くて湖面が荒れ、晴れ渡った空とは裏腹に気分はだんだん心細くなってしまい、早々に湖を後にします。


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バラトンフェニヴェシュの駅舎。一応有人駅ですが、人の気配がなさ過ぎて無人駅のような雰囲気です。


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ブダペストへの帰路は準急18503列車に乗車。当初予定では一本前の急行853列車に乗車するつもりでしたが、時刻変更のため接続が間に合わなくなり急遽変更。図らずも行きと帰りで急行と準急を乗り比べることになりました。準急列車はハンガリー語でシェベシュ (sebes) と呼ばれ、急行列車と同額の急行料金がかかります。とはいっても、ブダペスト ~ バラトンフェニヴェシュ間の約160 kmで、急行料金は235フォリント (日本円で100円くらい) です。


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準急18503列車はわずか客車2両編成。急行列車と同じハルバーシュタット客車が使用されています。車内はやはりガラガラです。


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往路と同じくバラトンセメシュ ~ シオーフォク間はバス代行。往路では乗り換えのバスを探すのに気を取られ、素通りしてしまったシオーフォクの駅舎は、改めて見ると結構立派な外観です。シオーフォクはバラトン湖周辺では一番大きい街とのこと。


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シオーフォクからの乗り継ぎ列車は、やはり同じ列車番号の準急18503列車。客車の数が増えています。


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準急列車ということで、急行列車よりも多くの駅に停車しながら、往路より1時間ほど余計にかかってブダペスト南駅に帰着。


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予定していなかったバス代行の影響で、当初の計画より2時間ほど遅くなり、ブダペストに帰り着いたのは夜の8時過ぎ。サマータイムのおかげで、空にはまだ少し明るさが残っています。


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