プラハ ~ ブダペスト : 国際夜行列車「ユーロナイト」
[2016年5月]
チェコの首都プラハからハンガリーの首都ブダペストまで、寝台車で移動します。乗車するのはベルリン発ブダペスト行きの国際夜行列車「ユーロナイト」EN 477列車。「メトロポール (Metropol) 号」という愛称が付けられています。
夜のプラハ中央駅 (プラハ・フラヴニー・ナードラジー Praha hlavní nádraží)。EN 477列車は深夜の23:58発で、すでに駅構内の店は軒並み閉店。することもあまりなく、少々待ちくたびれます。
ホームの案内表示によると、EN 477列車は14両編成。寝台車は4両で、クシェット (簡易寝台) 車が3両、あとは一等と二等の座席車という編成で、食堂車は連結されていません。一部車両は途中のブルノ (Brno) で切り離し、また一部が途中で分岐してオーストリアのウィーンへ向かいます。
発車時刻の30分ほど前、ベルリンからのEN 477列車が到着。編成の前側に付属編成を連結するため、機関車が切り離されます。
ほぼ同時刻に別のホームに付属編成が一旦入線します。この付属編成はブダペスト行きの列車ではプラハで増結という形をとっていますが、ブダペスト発の逆方向の列車の場合、プラハより手前のパルドゥビツェ (Pardubice) で切り離され、時間調整しながらプラハに2時間遅れて到着します。ベルリン行き基本編成のプラハ到着が朝の4時台のため、到着時間を遅らせてプラハ行きの乗客の便宜を図っているという次第です。
付属編成が推進運転で入線し、連結作業が完了。
待ちくたびれていた乗客たちが列車に乗り込んでいきます。発車まではまだ20分ほどあります。
乗車する前に、連結されている車両を見学。国際列車らしく、客車の国籍はバラエティに富んでいます。こちらの車両はスロバキアのクシェット車。車体のロゴによれば、車両を保有しているのはスロバキア鉄道 (ZSSK) ではなく、ワゴンサービス・トラベル社という車両リース会社のようです。
ハンガリー鉄道 (MÁV-Start) の二等座席車 (コンパートメントタイプ)。
チェコ鉄道 (ČD) の二等座席車 (オープンタイプ)。
チェコ鉄道のクシェット車。座席車と寝台車では、青と水色の配色が逆になっています。
チェコ鉄道の寝台車。今回はこちらに乗車します。
牽引機はスロバキア鉄道の350型電気機関車。チェコ (当時チェコスロバキア) のシュコダ (Škoda) 社製です。
個室寝台が並ぶ車内。トイレは車両両端の二か所にあり、うち一か所はシャワー付きです。1両に一か所しかないシャワーは競争率が高いかと思っていましたが、あまり使う人はいないようです。
個室内の様子。洗面台にクローゼット、簡単な朝食 (パン、お菓子、飲み物)、タオルなどが備えられています。定員3人の個室で、1人使用の場合は上段・中段が折りたたまれます。ヨーロッパの寝台車は、1人使用時は一等寝台、2人・3人使用時は二等寝台として扱われる場合が多いですが、国によって対応が異なり、チェコ鉄道の場合は1人使用でも二等扱いとなります。
時間も遅く、食堂車もないので早速寝入ります。夜中に目が覚めると、列車は国境近くの街ブジェツラフ (Břeclav) に停車中。隣のホームにワルシャワ発ウィーン行きのユーロナイトEN 407列車「ショパン (Chopin) 号」が入線してきました。この駅で両列車の一部客車が組み替えられ、「メトロポール号」のウィーン行き客車が「ショパン号」へ、「ショパン号」のブダペスト行き客車が「メトロポール号」へ、それぞれ連結しなおされます。
夜が明けると列車はスロバキア領内を走行中。列車から一歩も降りなかったので、スロバキアは素通りです。
列車はハンガリーに入国。景色はあまり変わりません。終点のブダペストまであと少しです。
終点のブダペスト東駅 (ブダペシュト・ケレティ・パーヤウドヴァル Budapest-Keleti pályaudvar) にはほぼ定刻に到着。プラハからの乗車時間は約8時間半です。
列車の後部には、「ショパン号」から組み替えられた客車が連結されています。ポーランドの長距離列車会社「PKPインターシティ」の保有車両が主体です。
機関車は、プラハ発車時と同じく、スロバキア鉄道の350型機関車。
1880年代に建てられたというブダペスト東駅の巨大な駅舎。ハンガリーを発着する国際列車のターミナル駅として威容を誇っています。