海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

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イギリス最大の保存鉄道「ブルーベル鉄道」

[2011年5月]

ブルーベル鉄道 (Bluebell Railway) は、イギリス南部のサセックス地方にある保存鉄道で、無数にあるイギリスの保存鉄道の中でも、最大級の規模を誇っています。ロンドンからも近く、日帰りで気軽に訪問できることから、日本でも比較的知られた存在です。また、営業開始から50年以上の歴史を持ち、保存鉄道の老舗的存在でもあります。

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ロンドンからブルーベル鉄道を訪問する定番的ルートは、近郊列車でイースト・グリンステッド (East Grinstead) まで行き、そこから473番のバスに乗って、ブルーベル鉄道のキングスコート (Kingscote) 駅まで行く方法です。ただ、大半の訪問客は車で訪れるため、週末でありながら、このバスには可哀想なくらい人が乗ってません。


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ブルーベル鉄道の北端である、キングスコート駅。ロンドンからはここが最も近いですが、付近に駐車場がなく、大半の客は南端のシェフィールド・パーク (Sheffield Park) 駅を利用するため、人影はあまりありません。


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シェフィールド・パークからの列車が到着。丸みを帯びた緑色の車体が特徴の客車は1950年前後に製造されたものです。


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牽引機は、パシフィック型「バトル・オブ・ブリテン級 (Battle of Britain class)」の大型機、34059号「アーチボルド・シンクレア卿 (Sir Archibald Sinclair) 号」。1947年製。小型の保存機が多いブルーベル鉄道の中では際立った存在です。


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転車台がないため、キングスコート発の列車は、機関車が後ろ向きで牽引します。


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それでは、いよいよ乗車。今回は少々贅沢をして、一等車にしてみます。ただ、せっかく一等車の切符を買っても、列車によっては一等車が連結されていない場合もありますので、注意が必要です。


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一等コンパートメント車両の通路。この車両は外板のみ金属製の半鋼製車で、壁や扉はすべて木製。


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コンパートメントの内部。一等車らしい重厚なシートが並びます。


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こちらは隣に連結されていた三等車の車内。ボックスシートではありますが、三等車という割には少々贅沢な雰囲気も漂う内装です。


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列車はキングスコート駅を出発。終点のシェフィールド・パークまでは約14.5 km、片道30分少々の旅です。


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イギリスの片田舎を、ややゆっくりとした速度で走り抜けていきます。


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列車は、ほぼ中間地点にある唯一の中間駅、ホーステッド・ケインズ (Horsted Keynes) に到着。この駅には車両基地が併設されており、希望者は内部を見学することもできます。


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この駅でしばらく停車し、行き違いの対向列車を待ちます。


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キングスコート行きの対向列車が到着。こちらはバトル・オブ・ブリテン級とは対照的な、小型機の重連でやってきました。先頭の178号機は1910年製、次位の592号は1902年製と、どちらも百年選手の大古参です。


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ホーステッド・ケインズを発車した列車は、引き続きシェフィールド・パークへ向けて快走。この腕木式信号機もやはり保存対象の一環でしょうか。現役で稼動しているかどうかは良くわかりません。


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列車は、終点シェフィールド・パーク駅に到着。この日は特別列車「ゴールデン・アロー号」の運行も行われているようです。


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シェフィールド・パーク駅は、このブルーベル鉄道を訪問する際の拠点となる駅で、駅施設のほか、売店、レストランなども併設されています。売店では鉄道グッズのほか、イギリスの鉄道雑誌のかなり古いバックナンバー (50年前くらいのもの) も入手可能です。


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乗ってきた列車は、すぐに機回しを行って、再びキングスコートへ向かって旅立っていきます。急いで引き返す理由もないので、とりあえずこの列車は見送り、シェフィールド・パーク駅を見て回ることにします。


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駅併設の機関庫には、静態保存の機関車が数多く留置されています。このうちのいくつかは、近年までブルーベル鉄道で保存運転が行われた後、老朽化により再び静態保存とされたものや、逆に動態化に向けて現在レストアを行っているものもあります。


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駅舎はキングスコートと同様の煉瓦造りの小さな建物。駅前に何気なく停めてあるツートンカラーの3輪自動車も、どうやらブルーベル鉄道所有の保存物のようです。


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帰路は、先ほどホーステッド・ケインズですれ違った、小型機の重連牽引の列車に乗ります。わざわざ機関車と時代を合わせたのか、客車も1930年前後に製造された古めのものが使用されています。


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前述の通り、今回は一等車のきっぷを買いましたが、残念ながらこの列車は全部三等車。とはいえ、一部車両はコンパートメントとなっており、どこが一等車と違うのかはよく判りません。一方、客車の製造年が古いだけあって、各コンパートメントに直接出入り口が付いているなど、面白い特徴もあります。


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再び列車に30分程揺られ、出発点のキングスコート駅に帰着。本来ならば旅はここで終わりですが、客車1両のみの列車が隣に止まっていたので、更にこちらにも乗車してみることにします。この青い機関車323号は、その名も「ブルーベル号」。このブルーベル鉄道の主役的存在です。


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客車は妻面までガラス張りになった展望車両。1913年製の、この日乗車した中では最古参の車両です。


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列車はキングスコートから、シェフィールド・パークとは逆方向、イースト・グリンステッド駅がある方へ向けて推進運転で走り始めます。実はこのブルーベル鉄道、かつてはイースト・グリンステッド駅から更に伸びていた路線の一部で、路線廃止後に保存鉄道として線路を復活させたものです。現在、再びイースト・グリンステッドまで線路を繋ぐべく、工事が行われています。このミニ列車の運行も、それをアピールするためのもののようです。


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しかしながら、線路は突如、壁に当たって途切れてしまいます。キングスコート~イースト・グリンステッド間の掘割区間は、路線廃止後にゴミ捨て場として使われていたそうで、路線復活にはそのゴミをすべて除去する必要があるとのこと。もちろん、それには莫大な費用がかかるため、ブルーベル鉄道では募金のお願いもしていますが、この大きく立ちはだかる壁を見ると、計画が予定通り進むのかは不安です。


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ブルーベル号牽引のミニ列車は、キングスコート駅に戻り、これで今回の旅はようやく終了。隣のホームには、前にシェフィールド・パーク駅で見かけた特別列車「ゴールデン・アロー号」が停まっています。


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このゴールデン・アロー号は、プルマン車を主体とした4両編成の列車で、乗客には食事も振舞われます。かつて実在した同名の豪華列車を再現する趣向のようです。この他にも、現在レストア中の客車もあり、今後も更にバラエティに富んだ列車たちにお目にかかれそうです。


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