ロヴァニエミ ~ ヘルシンキ : 夜行列車「サンタクロース・エクスプレス」
[2013年1月]
フィンランド滞在中はずっと天気が悪かったものの、かろうじて最終日に晴れ間が現れ、オーロラも無事に見ることができました。帰路も列車に乗って、首都ヘルシンキへ戻ります。乗車するのは、日本でも有名になった夜行列車「サンタクロース・エクスプレス」です。
長距離バスに乗ってロヴァニエミ (Rovaniemi) 駅に到着したのは昼過ぎ。「サンタクロース・エクスプレス」の発車まではまだまだ時間があります。コインロッカーに荷物を一旦預け、路線バスに乗ってサンタクロース村にでも行ってみることにします。
バスが来るまでの間、駅のホームで列車を見学。向こう側のホームに止まっているのは、モスクワからやってきた国際列車です。ロシアとフィンランドは線路幅が同じ1524 mmなので (正確にはロシアは1520 mmですが、相互乗り入れは可能)、ロシア国鉄の車両がフィンランドまで直接乗り入れてきます。
手前のホームには、クオピオ (Kuopio) 行き急行P710列車が入線。牽引機はソ連製のSr1型電気機関車です。
Sr1型の側面には「MADE IN USSR」の表記。後継のスイス製Sr2型電気機関車に主役の座こそ譲ったものの、現在でもフィンランド各地で活躍を見ることができます。Sr1型も最近は緑色ベースの新塗色への変更が進んでいます。
客車は、「青客車 (シニセト・ヴァウヌト Siniset vaunut)」と呼ばれる急行型客車。客車は総勢6両編成です。
終点クオピオまでの所要時間は約5時間。ローカル急行といえども長距離を走る列車だけに、食堂車も連結されています。
列車の観察もほどほどにして、サンタクロース村へ行くため一旦駅を離れます。夕方のような雰囲気ですが、これでも昼の1時です。
サンタクロース村での観光を終え、再びロヴァニエミ駅へ。昼に見たロシア国鉄の列車はまだ停まっています。17時過ぎの発車なので、出発はもうすぐのようです。
ロヴァニエミからロシアへ行く列車は、一日二往復。連結されている客車の数も多く、重要の旺盛さが伺えます。
駅の端に停まっているこの車両は乗用車運搬車。フィンランドの寝台列車には、いわゆる「カートレイン」のサービスがあって、「サンタクロース・エクスプレス」でも車を運ぶことができます。乗用車運搬車は二階建て「インターシティ」用客車と似た外観で、最高速度は160 km/h。二車体で一組となっており、一軸台車を履いているなど、構造的にもいろいろと興味深い点が見られます。
「サンタクロース・エクスプレス」の客車が入線。先ほどの乗用車運搬車と連結されます。牽引機は前述のローカル急行と同じソ連製Sr1型。Sr1型の最高速度は140 km/hですが、「サンタクロース・エクスプレス」は急行列車で速度も若干遅いため、充当される機関車の種類は特に限定されていないようです。
座席車は、こちらもローカル急行と同じく青客車。
「サンタクロース・エクスプレス」のサボ。行き先と経由地の地名が、フィンランドの二つの公用語であるフィンランド語とスウェーデン語で表記されています。この車両が先頭車ですが、号車番号は56号車から始まっています。ちなみに、私が乗車する寝台車は60号車です。
食堂車も「青客車」タイプ。
「インターシティ」用塗色でありながら、実は「青客車」と同じタイプの客車もあります。「インターシティ」用客車との大きな違いは、乗降扉が自動か手動かという点です。ただし、一部には「インターシティ」用塗色で扉も自動化改造された車両もあります。
こちらが今回乗車する寝台車。数年前まで「青客車」タイプの寝台車が使用されていましたが、現在は二階建ての新型車両に置き換えられています。新型車両は構造的にも「インターシティ」用二階建て座席車とよく似ていますが、設計最高速度は200 km/hから160 km/hに若干引き下げれられています。もっとも、「インターシティ」でも200 km/h走行する列車はほとんどないのですが。
大きな荷物を持った乗客たちが、ぞろぞろと列車に向かっていきます。
気温はマイナス12℃。この季節にしては暖かいほうなのでしょうか? とはいえ、私にはやはり極寒の温度なので、列車を長時間観察し続けるのもだんだん辛くなってきます。
というわけで車内へ。寝台は全て2人用個室で、2階がシャワー・トイレ付き、1階がシャワー・トイレ別。値段も若干違います。
私が乗車するのは、2階のシャワー・トイレ付き個室。居住性はかなり良さそうです。
シャワー・トイレ室の内部。洗面台部分を手前に引くと、裏側からシャワーが現れるという構造です (写真中央の小さなシャワーは、お尻洗い用)。広くはないですが、列車内ということを考えれば十分に贅沢です。シャワーは湯量制限等は特にありませんが、スイッチを押すとお湯が数秒だけ出る構造で、無駄遣いしないような仕組みにはなっています。なお個室内には、液体石鹸、歯磨き用のミネラルウォーター、フェイスタオル、バスタオルなど、必要なものは一通り揃えられています。
列車は18:10発。あと3分ほどで発車です。枕元の目覚まし時計をあらかじめセットして、何時寝てしまっても良いように備えておくことにします。
快適な個室寝台の旅を堪能した翌朝、やはり外はまだ暗闇です。ヘルシンキに付くまでの間、食堂車や座席車の車内散策をして過ごします。
ヘルシンキ到着の直前、列車は車両基地でしばらく停車します。どうやら乗用車運搬車はここで切り離されるようです。車のドライバーもここで一緒に下車するのでしょうか。
車両基地での停車時間が予定より伸びて、終点のヘルシンキ中央駅には30分ほど遅れて到着。
オーロラ観察旅行にかこつけたフィンランド鉄道の旅はこれにて終了。実はこのあと、このまま空港に向かって昼の便で日本へ帰国の予定で、旅行の計画を立てていた時は、寝台列車と飛行機の連続乗り継ぎは体力的に少々辛いかなとも思っていたのですが、個室寝台で期待以上に快適に過ごすことができたので、その点は全く問題なさそうです。