海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

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マドリードの鉄道博物館

[2017年5月]

マドリードにある鉄道博物館を訪ねてみます。

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場所は、近郊電車「セルカニアス (Cercanías)」のデリシアス (Delicias) 駅のすぐ近く。長距離列車のターミナルであるプエルタ・デ・アトーチャ (Puerta de Atocha) 駅からも頑張れば歩いて行ける距離です。入り口はあまり目立たない雰囲気。鉄道博物館 (ムセオ・デル・フェロカリル Museo del Ferrocarril) の表示が目印です。


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鉄道博物館は、1969年に廃止された旧デリシアス駅の建物を活用して設置されています。旧デリシアス駅は、一時期はアトーチャ駅やチャマルティン (Chamartín) 駅とも並ぶ存在のターミナル駅で、主にスペイン西部やポルトガル行きの長距離列車が発着していました。


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入口で入場券を購入し、中へ入ります。大きな荷物はカウンターで預かってくれます。建物内はかつてのプラットホームがそのまま残され、4本の発着線にはそれぞれ主に蒸気機関車、電気機関車、ディーゼル機関車、客車とディーゼルカーが並べられています。


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インパクト抜群のこちらの車両は、スペインの鉄道の代名詞ともいえる連接客車「タルゴ (Talgo)」の初代量産型、タルゴII。1950年製。設計はスペインで、製造はアメリカで行われました。広軌路線でカーブを高速で通過するために採用された、独立車輪の一軸台車が大きな特徴です。軌間可変機構が採用されたのは後の世代のタルゴIII RD型から、また振り子機能が搭載されたのは更に後のタルゴIV型からです。


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タルゴII型は台車の構造上、一方向にしか高速走行できず、後進は低速運転に限られます。終点では編成ごと方向転換を行っていました。機関車も片運転台型のタルゴII専用機で、編成は固定されています。


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タルゴII型は車内に入ることもできます。リクライニングシートが横4列で並び、最後尾は展望スペースになっています。


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客室内にも連接部分があります。車輪が左右独立となっているのがよくわかる構造です。


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イタリア・フィアット製の流線型ディーゼルカー、TAF型。制式名は595型。1952年製。長距離列車のサービス改善用として重要路線に投入されました。早くも60年代にはタルゴIIIや後述のTER型などの新型長距離車両が出現し、徐々に支線級の運用へ追いやられて行きました。軸重が軽く多くの路線で走行が可能でした。


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TAF型の後継型の一つであるTER型長距離ディーゼルカー。制式名は597型。フィアットからのライセンスを受け、スペインのCAF (カフ) で製造されました。1965年製。動力車と付随車を2両ずつ配した4両が基本編成で、最大12両編成まで連結が可能でした。95年ころまで活躍し、その後一部車両はアルゼンチンに譲渡されました。


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アメリカン・ロコモティブ (American Locomotive Company, ALCO) 製のディーゼル機関車、1600型。後の形式称号改訂で316型と改称されています。入換機以外ではスペインで初めて導入されたディーゼル機関車で、その後のスペイン国内製機関車のプロトタイプともなりました。1955年製。


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ドイツのクラウス・マッファイ (Krauss-Maffei) からのライセンスを受け、アメリカのバブコック&ウィルコックス (Babcock & Wilcox) で製造された4000型ディーゼル機関車。改訂後の形式名は340型。スペインで使用された唯一の液体式ディーゼル機関車です。1967年製。最高速度130 km/hは当時としては最大速力を誇り、幹線級の旅客列車に使用されましたが、液体変速機にトラブルが多く、87年には全機が引退しました。


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1907年製の古参電気機関車、3号 (nº 3)。スペイン南部の鉱山鉄道の電化に伴って製造されました。5200V、25Hzの三相交流方式で、同じ電化方式がスペイン国内で広まらなかったため、他路線へ活躍を広げることはありませんでした。同型機が7両製造されましたが、現存しているのはこの1両だけです。


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1925年製の電気機関車、6005号。アメリカ製で3軸台車を履いています。運用される路線の橋の強度を考慮して、軸重が13.5トンに抑えられています。


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電気機関車7400型。改訂後の形式名は274型。スペインのデビス (Devis) とスイスのセシェロン (Sécheron) により1944年に製造されました。構造がシンプルで信頼性が高く、旅客列車と貨物列車の両方で重用されました。


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電気機関車7500型。改訂後の形式名は275型。スペインのCAFとスイスのブラウン・ボベリ (Brown, Boveri & Cie, BBC)、エリコン (Oerlikon) による製造で、上記の7400型と同時期の1944年製。当時はスペインで最大の出力を誇っていました。1972年に架線電圧が1500Vから3000Vに昇圧されたのに伴い、7400型とともにバスク地方に転用されました。


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ガラスの向こうに置かれている機関車。どうやら展示車両の入替えによって、場所がなくなり屋外に出されてしまったようです。


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オリエント急行でおなじみのワゴン・リ社の食堂車。元はフランスなどで使われていた車両で、その後スペインに譲渡され、広軌用の台車に換装した上で国内列車として使用されました。現在は予約制レストランとして営業しています。隣にはワゴン・リ社の客車がもう1両展示され、こちらは予約不要のカフェテリアとして使われています。


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今年はスペインの高速鉄道AVEの開業25周年。AVEに関する展示も行われています。スペイン初の高速鉄道は、1992年のセビリア万博開催に合わせ、マドリード ~ セビリア (Sevilla) 間で開業しました。


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AVEプロジェクトの経済調査資料も展示されています (閲覧不可)。列車のデザインが時代を感じさせます。表紙に記載された路線図はマドリード ~ バルセロナとなっています。当初はセビリア行き路線よりも優先として考えられていたということでしょうか。


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鉄道模型の展示コーナー。全車両がHOゲージで、全て1人の個人所有のものとのこと。総額で一体幾らになるのやらと考えてしまいます。ヨーロッパの車両が中心ですが、アメリカや中国、そして日本の車両も数多く展示されています。蒸気機関車から最新の高速列車まで、展示車両は多種多様です。


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線路に関する展示コーナー。スペインの線路保有会社であるADIF (アディフ) が中心となって展示を行っており、保線作業の様子など少々渋い展示もあります。


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開館直後はまばらだった訪問客も、昼が近づくころには結構増えてきました。大半が親子連れで、お目当ては11:30運転開始のミニSL。「マドリード環状鉄道 (シルクロ・マドリレーニョ・フェロビアリオ Círculo Madrileño Ferroviario, CiMaF)」と呼ばれるこのミニSL、運転日は月2,3回ほどしかありませんが、この日はたまたま運転日に当たったようです。見るだけでも見てみようと思いましたが、乗車コーナーにはすでに長い行列ができており、近づくこともままなりません。


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ミニSLの人気ぶりはなかなかのようで、博物館の入口にも、いつのまにか親子連れの長い行列ができています。館内があまり混雑しないうちに博物館を後にすることにします。


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