バルセロナ ~ タラゴナ : 高速列車「アバント」で訪ねる世界遺産の街
[2014年7月]
バルセロナの南西に位置する世界遺産の街タラゴナ (Tarragona) へ、列車で移動してみます。タラゴナへは高速鉄道と在来線の両方が利用できますが、高速鉄道のタラゴナ駅は街の中心部から遠く離れているため、バルセロナからの移動の場合は在来線の方が便利です。今回は敢えてイバラの道 (?) を歩むべく、高速列車「アバント (Avant)」でタラゴナを目指します。
今回乗車するリェイダ (Lleida) 行き「アバント」114系電車。イタリアのETR600/610をベースにスペイン仕様とした車両で、最高速度は250 km/h。高速線専用のため、振り子機能は省略されています。
アバントは、かつてはAVEと同じ「高速鉄道 (アルタ・ベロシダ Alta Velocidad)」というカテゴリに入れられていましたが、現在はMDやレヒオナル・エクスプレス (Regional Exprés) と同じ「中距離列車 (メディア・ディスタンシア Media Distancia)」に区分されています。車体色も、紫とオレンジのラインが入った中距離列車専用色を纏っています。
車両は4両編成で、普通車のみのモノクラス。全車指定席です。乗客はかなり少なめ。
バルセロナを出発してしばらくの間、在来線と並行して走ります。このあたりの区間は、貨物列車の運用の都合で在来線の線路が標準軌と広軌の三線軌条となっています。この三線軌条区間を地中海沿いにバレンシアまで拡充する計画もあります。
車窓には、聖地として知られるモンセラートが見えます。特徴的なギザギザの形状が遠くからでも良く分かります。このモンセラートへも鉄道のアクセス路線があります。
車内のモニターには、路線図と現在位置が示されています。現在位置はGPSを使って計測しているようで、地下区間やトンネルでは表示が消えてしまいます。
列車は快調に走りますが、乗り心地は少々硬く、若干振動が多いように感じます。
バルセロナから30分少々で、列車は目的地のカム・ダ・タラゴナ (Camp de Tarragona) に到着。
カム・ダ・タラゴナとは「タラゴナの原」を意味する地名で、駅名の通り周囲は平原ばかりで何もありません。日本で言えば「こだま」しか停まらない新幹線単独駅のような雰囲気です。この駅から分岐してバレンシア方面へ伸びる新線の建設が進められており、駅から少しはなれたところに建設現場を見ることもできます。
何もない駅前でバスを待ちます。バスの本数は1時間に1、2本程度で、休日は本数が少なめになります。
カム・ダ・タラゴナから乗ってきたバス。20分少々で終点のバスターミナルに到着。
終点のバスターミナルは市の中心部にありますが、在来線の駅からは少し離れています。ここからは歩きで、在来線の駅へ向かうことにします。
バスターミナルから少し歩くと、ランブラ・ノバというメインストリートに出ます。在来線の駅へは、この通りを海に突き当たるまでまっすぐに歩いていきます。
バスターミナルから10分少々で海に出ます。少し寄り道して、一世紀に建造されたという古代遺跡「円形劇場」を見学。タラゴナには世界遺産「タッラコの考古遺跡群」として、他にも有名な古代ローマ時代の遺跡が点在しています。今回は時間の都合により、この一点を見ただけで世界遺産は終わり。
「地中海のバルコニー」と呼ばれる高台を歩き、駅へ向かいます。眼下に線路が走っているのが見えます。天気にも恵まれて非常に気持ちの良い景色です。
麓に降り、ようやく在来線のタラゴナ駅に到着。遺跡見学の時間を除いても、高速鉄道→バス→徒歩で1時間半ほど掛かかりましたが、バルセロナから在来線を利用すれば所要時間は1時間ほど。高速鉄道利用がいかに割に合わない選択であるか、身をもって体験した次第です。
ここからは、中距離の急行列車「レヒオナル・エクスプレス (Regional Exprés)」に乗ってバルセロナへ帰ります。タラゴナ駅はバルセロナとバレンシアを結ぶ地中海沿いの幹線上にあり、特急列車「ユーロメッド (Euromed)」などもこの駅を通ります。
レヒオナル・エクスプレスということで、448系 (一つ前の写真に写っている車両) がやってくるかと思っていたのですが、実際に来たのは「MD」用の449系列車。最新型の車両ですが、私個人的には数日前に同じ車両に乗ったばかりなので、少々残念な感じ。世界遺産の街で世界遺産をほとんど見ないまま、列車に乗ってバルセロナへ戻ります。