特急列車「ユーロメッド」で地中海沿いを行く
[2012年3月]
今回はスペインの高速鉄道を乗り比べてみることにします。まずはバルセロナからアリカンテ (Alicante) まで、地中海沿いの広軌在来線区間を走る特急列車「ユーロメッド (Euromed)」に乗車して、バレンシアに向かいます。「ユーロメッド」という呼び名は、スペイン語では「エウロメ」、地元のカタルーニャ語・バレンシア語では「アウルメット」と発音されます。
バルセロナのターミナルは、近代的な建築様式が特徴のサンツ (Barcelona-Sants) 駅。ホームは全て地下化されており、残念ながら構外からは列車の姿を拝むことができません。駅の上の建物はホテルとなっています。今回は私もここへの宿泊を試みましたが、残念ながら満室で念願は叶わず。
乗車する列車は、バルセロナ7:00発、アリカンテ (バレンシア語名: アラカント Alacant) 行きユーロメッド1071列車。軌間可変型「タルゴ250」の130系車両が使用されていますが、列車は全区間在来線 (広軌) を通り、軌間変更は行われません。2009年頃まではTGVタイプの広軌専用車101系が使用されていましたが、高速鉄道AVEの増備用改造種車として全車接収されてしまい、現在は130系のみが使われています。将来的な標準軌区間への乗り入れも想定しているようです。
130系車両は、両端の動力車にタルゴIV型客車が挟まれるプッシュプル編成。客車の妻面にさりげなくタルゴのロゴが入っています。
短い車体長と一軸台車が特徴的なタルゴ型客車。列車名は「ユーロメッド」ですが、車体には軌間可変を行う特急列車「アルビア (Alvia)」のロゴが入っています。車両価格も高いと思われる軌間可変車両を、軌間変更を伴わない在来線専用列車に使用するというのは、何とも贅沢な話に思えます。それとも、スペインではすでに軌間可変車両の低価格化に成功しているのでしょうか。
ニ等車「トゥリスタ (Turista)」の車内。回転式リクライニングシートが並ぶ一般的な車内ですが、車体長が短いため席は9列しかなく、半室車両のような雰囲気です。
バルセロナを発車した列車は、「ユーロメッド」の列車名の由来ともなった地中海 (スペイン語でメディテラーネオ Mediterráneo) を垣間見ながら、朝方のカタルーニャの大地を走って行きます。
この130系車両の設計最高速度は、標準軌の高速線で250 km/h、広軌の在来線で220 km/h。高速走行対応車両とはいえ、在来線を走る以上は線路側の速度制限の制約を受けます。この列車も最初は140 km/h程度で比較的ゆっくり走っていましたが、徐々に調子が上がって、遂に200 km/h走行へ。車窓風景も迫力が増します。
バレンシアといえばオレンジが連想されますが、実際にバレンシア地方は農業で有名な地域で、車窓にも広大なオレンジ畑が続きます。もっとも、「バレンシアオレンジ」自体はカリフォルニア原産の品種で、バレンシア地方とは直接関係はないらしいですが…。
バルセロナを出発して約3時間、列車はバレンシア・ホアキン・ソローリャ (Valencia-Joaquín Sorolla) 駅に定刻に到着。列車は更にアリカンテまで走りますが、今回はここで下車します。
列車はこの駅で進行方向が変わります。終点アリカンテまでは更に1時間40分ほどかかります。
バレンシア出身の画家にちなんだ駅名を持つホアキン・ソローリャ駅は、高速鉄道AVE (アベ) の建設にあわせ、従来のターミナル駅であるバレンシア北駅 (バレンシア・アスタシオ・ダル・ノルト Valencia-Estació del Nord) に代って設置されました。ただこの駅はあくまでも仮駅で、将来的には新しい統合ターミナルのバレンシア・パルク・サンラル (Valencia-Parc Central) 駅が建設され、ホアキン・ソローリャ駅は廃止される予定です。