プルゼニ ~ チェスケー・ブジェヨヴィツェ : ボヘミアをめぐる列車旅2
[2016年5月]
チェコの西半分にあたるボヘミア地方の都市を、列車に乗って巡ります。続いては、ビールの里プルゼニ (Plzeň) から、チェコ南部の古都チェスケー・ブジェヨヴィツェ (České Budějovice) へ。チェスケー・ブジェヨヴィツェは「バドワイザー」の語源ともなった街で (アメリカのビールは名前を借りただけで直接は関係なし)、さしずめ「世界的な二大ビール都市を結ぶ旅」と言えます。
出発地のプルゼニ中央駅 (プルゼニ・フラヴニー・ナードラジー Plzeň hlavní nádraží)。1907年に建てられた古い駅舎が、築堤上を走る線路に両脇を挟まれているという、特徴的な構造をしています。
アール・ヌーヴォー調のデザインとされる駅舎は、天井が高く内部は広々としています。
駅舎内にはビュッフェスタイルの大衆食堂もあります。メニューがチェコ語しかなく注文には一苦労。ビールもあるので、ビールの里を訪れた記念に。
プラットホームに上がり、乗車予定の列車が来るまで少しだけ他の列車を見学します。こちらの列車は、近郊列車用と思しき制御客車付き客車列車。そのフロントマスクからシセル (Sysel、リスの一種) というニックネームがつけられています。
今回乗車する快速 (リフリーク Rychlík) R 669列車「ロジュンベルク (Rožmberk) 号」。プルゼニからチェスケー・ブジェヨヴィツェを経由して、チェコ東部のブルノ (Brno) まで約6時間半かけて走ります。自動扉を装備した更新型客車が1両と、手動扉の旧式客車が3両の計4両編成で、一部に一等席もあります。牽引機はチェコスロバキア (当時) のシュコダ (Škoda) 製242型機関車。前面の塗装が剥げかかって、元々の厳つい顔が益々強面になっています。
旧式客車の二等コンパートメントに乗車します。片側4人掛けのシートで、2人分毎に仕切りがあります。更新型客車の片側3人掛け座席と比べると、座席当たりの占有面積は狭くなるものの、仕切りが少ない分、乗客が少ないときはむしろゆったりと使えます。
プルゼニを発車した列車は、約30分後にようやく最初の駅に停車。プルゼニ出発時はそこそこの数がいた乗客も、多くはこの駅で降りてしまい、車内はガラガラになります。
最初は相席だったコンパートメントも、私1人になり悠々と過ごします。旧式客車の乗り心地は、更新型客車と比べるとやはり振動も走行音もやや大きめですが、「列車旅らしい雰囲気」を楽しむには、このくらいが丁度よいという感じです。
プルゼニからチェスケー・ブジェヨヴィツェまでの区間は、パターンダイヤで2時間に一本の列車頻度。線路もほぼ全区間が単線で、一部のみが複線化されてます。
旧式客車の最大の利点は、窓が開けられるということ。上段だけが下降する二段式窓なので、座ったまま風を感じるという訳にはいきませんが、立ち上がって外の景色を見ながら過ごすのも悪くありません。
途中駅で支線からのローカル気動車の接続待ちのため、しばらく停車。駅舎に面したプラットホームでは、地元の親子連れが遊んでいます。田舎らしいのんびりした雰囲気です。
プルゼニから約2時間、列車は10分ほど遅れてチェスケー・ブジェヨヴィツェに到着。列車はこの先、終点ブルノまでまだ4時間ほど旅を続けます。この駅から進行方向が変わり、また同時に機関車交換も行われます。同形式の242型機関車が列車の反対側に連結されます。
隣のホームに停車中のシュコダ製650系電車。愛称は「レギオパンター (RegioPanter)」。チェコ鉄道 (ČD) では他にも地域輸送用気動車「レギオシャーク (RegioShark)」や「レギオスパイダー (RegioSpider)」、近郊電車「シティ・エレファント (CityElephant)」といった、動物名を冠した車両が多くあります。利用客に覚えてもらいやすくするための施策とのことで、「鉄道動物園」とも称されています。
このあたりでは、客車の普通列車 (オソブニー・ヴラク Osobní vlak) も走っています。
プルゼニ駅に負けず劣らずの歴史を感じさせるチェスケー・ブジェヨヴィツェの駅舎は、1908年の建築。写真を撮っていると地元の老人が話し掛けてきて、曰く「塗装が剥げてボロボロだろ? 地元の恥だよ。今年修復される予定だけどね。」とのこと。確かに少々傷んではいますが、今でも十分美しい建物です。