海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

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香港鉄路博物館

[2010年8月]

香港郊外の大埔墟 (Tai Po Market) 駅近くに、小さな鉄道博物館があります。九広鉄路関連のさまざまな展示が行われており、特に非電化時代の貴重な車両たちには一見の価値があります。
九広鉄路は香港 ~ 広州を結ぶ鉄道として1911年に開業し、当時から香港 ~ 広州間の直通運転を行ってましたが、1949年に政治的な理由により国境で運行が分断、その後1979年の運行再開まで香港内のローカル輸送に徹することになります。一方、香港内の区間が全線電化されたのは1983年、それまでは非電化の路線を客車列車がのんびりと運行していました。

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博物館は、旧・大埔墟駅の跡地に設置されており、現・大埔墟駅からは若干距離があります。道が入り組んで場所は少々わかりにくいですが、駅から案内にしたがって歩けば、迷わずに着くことができます。入場料は無料。


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博物館のメイン展示館となっている建物は、旧・大埔墟駅の元駅舎。伝統的な中国様式を模したスタイルで、当時の九広鉄路の他の駅とは異なり、特別に意匠を凝らされたものだったようです。


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駅舎内には、当時使われていた駅の設備や、旧・九広鉄路から香港鉄路 (MTR) にいたるまでの歴史を紹介したパネルの展示などが行われています。


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構内にはレールが敷かれ、非電化時代に活躍した機関車、客車が展示されています。現在では通勤電車が高頻度で運行されている東鉄線ですが、30年ほど前まではローカル線然とした客車列車が運行されていたというのは驚きです。この機関車は、米国EMD社のオーストラリアの工場で製造されたG12型電気式ディーゼル機関車。展示されているトップナンバーの51号は「亞?山大爵士號 (アレキサンダー号)」と名づけられ、旅客輸送から退いた後も貨物輸送用として1997年まで活躍していたとのこと。


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この小さな蒸気機関車は、九広鉄路のナローゲージの支線で活躍していたもの。支線はすぐに廃止されてしまったため、活躍期間も短かったと思われます。


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客車は6両を展示。向かって右側に展示されている2両は、九広鉄路黎明期に製造された、特に歴史が古い車両です。この赤い客車は、002号工程車 (Engineering Coach) で、1921年製。


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002号の車内。「工程車」という車種が良くわかりませんが、作業員を輸送するための車両だったのでしょうか。


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こちらは更に古い、302号三等客車、1911年製。


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車内には木製の転換クロスシート (!) が並びます。座席配置は2-3列。なお、この手の木製転換シートは、現在もスターフェリー船内などで使われており、香港では一般的な座席形状のようです。


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こちらは、112号頭等車 (一等客車)。1964年製。窓割がどことなく10系寝台車に似ている気がします。


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頭等車の車内。クッションつきのボックスシートが並びます。現在の東鉄線の電車にも頭等車が連結されていますが、この当時からの流れを汲んでいるのでしょうか。ちなみに現在でも頭等車はボックスシートですので、サービスの質的にはそれほど変化していないとも言えます (冷房は付きましたが)。


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続いては、229号行李車。1955年製。


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行李車とは日本語で言うところに荷物車ですが、車両構造は旅客・荷物合造車のようです。


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こちらは比較的新しい、1976年製の276号普通車。裾絞りの形状などに日本製車両の雰囲気があるなと思ったら、やはり日本の近畿車輛製。近畿車輛は、近年もKttの二階建て客車の製造を担当したりしてましたが、この頃にはすでに香港と関係があったようです。


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普通車のシートは、前述の木製転換シートを少しだけ進化させたもの。クッションが付き、2-2列配置となったことで居住性はあがっているようです。


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275号客車の乗降扉。2枚折り戸が、やはり日本製車両の雰囲気を匂わせています。


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最後は、223号三等車。1955年製。


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この車両はビデオ放映室として使われているようで、普段は車内に立ち入ることができません。シートは、例の木製転換クロスシート。ちなみに、ビデオは広九鉄路の歴史を紹介した内容のもので、週末のみ開館時間中に随時放映されてます。広東語がわかる方はどうぞ。


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鉄道博物館は規模が小さく、じっくり見て回ってもせいぜい1時間くらい。場所も、香港中心部から電車で片道30分ほどかかり、わざわざやってくるには少し遠いところです。しかし、Tai Po Marketという駅名のとおり、周辺には市場が広がっており、香港島や九龍とは異なるローカル的な雰囲気も味わえます。市場と博物館を絡めた半日程度の観光として訪れてみるといいかもしれません。


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