海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

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港町サントス・観光用路面電車と貨物線など

[2010年11月]

ブラジルには広大な鉄道ネットワークがありますが、過去の道路偏重政策の影響で、旅客列車は大都市近郊を除いてほぼ壊滅状態となり、現在はほとんどの区間で貨物列車のみの運行となっています。その一方、鉄道の歴史的価値は広く認められているようで、国内各地に数多くの保存鉄道、保存駅舎などが存在しています。まず紹介するのは、大都市サンパウロ近郊の港町、サントス (Santos) の観光用路面電車です。

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観光用路面電車 (ボンジ・トゥリスチコ Bonde turístico) は、かつて使われていた路面電車の線路と電車を利用して、ヨーロッパの雰囲気漂うサントスの古い街並みを見学するミニツアーで、別名「生きた博物館 (ムゼウ・ヴィーヴォ・ド・ボンジ Museu Vivo do Bonde)」とも呼ばれています。この路面電車には、サントス旧市街 (セントロ) の市役所前広場 (マウアー広場) から乗ることができます。街のあちこちに案内看板が出ています。


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レトロ感あふれる路面電車。写真の224号車はサントスのオリジナル車ではなく、ポルトガルのポルト市から寄贈されたもので、1920年代の製造です。後ろの開放座席の付随車01号車は、サントスの路面電車が電化される前の時代に、ロバに牽かれて使用されていたという1870年製の超年代物。この他にもアメリカ、イタリアなどから来た車両など、全部で9両の車両があります。運転時間は毎日午前11時から午後5時まで (月曜運休) で、一乗車は5レアル (約250円)。きっぷは車内で購入します。


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224号車の車内は、路面電車とは思えない意匠が凝らされた重厚なつくりで、座席も座り心地も良好です。写真右奥に座っている女性は観光案内係で、走行中に名所案内のアナウンスをしてくれます (ポルトガル語のみ)。しかし、週末だというのに乗客の姿はまばら。ブラジルではサントスはビーチリゾートの都市として認識されているようで、歴史的な街並みなどはあまり人気がないようです。


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電車は30分おきにに発車。ヨーロッパ風の雰囲気漂う石畳の併用軌道を走っていきます。


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電車は、ルート上の名所で随時停車し、観光案内を行います。写真の建物は、サントスでも有名な観光名所、コーヒー博物館 (旧コーヒー取引所) です。中では、コーヒー畑鉄道に関する展示などもありますので、興味のある方はどうぞ。


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一部には、すでに使われていない「廃線跡」もあります。


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こちらは、旧サントス駅駅舎。かつて日本などから来た海外移民は、サントスで船を降り、この駅から列車に乗ってブラジル内陸の各地へ散っていきました。サントスにも現役の鉄道路線はありますが、この駅舎は現在は鉄道駅としては使われていません。


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路面電車の線路上にはいくつかの分岐点があります。きっぷ裏面の路線図によれば、本来の周回ルートはセントロを8の字型に一周する総延長5 km、所要1時間程度の長いものでしたが、今回はあまりにも乗客が少なかったせいか、 (路線図にも載ってない) 短絡線を通って、15分ほどでツアーが終了してしまいました。2009年に路線を拡張したばかりとのことですが、思ったほど人気が集まっていないのでしょうか。


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ここからは路面電車以外のサントスの鉄道風景をご紹介します。こちらは先ほどの旧サントス駅駅舎。駅舎前の庇の下を路面電車の軌道が貫くという変わった構造をしています。建物は現在、観光局の事務所として使われています。


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庇には「サンパウロ鉄道」の文字。サンパウロ鉄道は、植民地時代の1800年代中頃にイギリス資本により設立された鉄道会社で、後に国有化されています。なお、こちらの人は「レイルウェイ」という英単語をポルトガル語風に「ハイウウェイ」と発音します。


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こちらは現役の鉄道であるモンチ・セハー (Monte Serrat) の丘ゆきケーブルカー。今回は時間の都合上、写真を撮るだけです。


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かつて丘の頂上にはカジノがあり、この丘も随分とにぎわっていたようです。現在は、小高い丘から海沿いの街並みを望む、ちょっとした展望所という感じのようです。


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旅客列車が廃れてしまったブラジルですが、貨物列車は数多く運行されており、港町サントス周辺でも、あちこちで貨物列車の姿を見ることができます。写真の機関車のALL (アメリカ・ラチーナ・ロジスチカ América Latina Logística) はブラジル南部からアルゼンチン北部までをカバーしている貨物鉄道会社。ブラジル連邦鉄道 (RFFSA) の分割民営化により誕生したFSA (フェホヴィア・スウ・アトランチコ Ferrovia Sul Atlântico) を母体とし、合併により活動範囲を国外にまで広げています。


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ブラジルの鉄道路線は多くがメーターゲージですが、サンパウロ州内には1600 mmのブロードゲージ区間もあり、サンパウロやサントスの周辺では、写真のような三線軌条を見ることができます。三線軌条の分岐器は、構造も複雑です。


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