サンパウロ・長距離旅客列車時代のターミナル駅
[2010年12月]
サンパウロの中心部には、かつて長距離旅客列車が栄華を誇った時代の二つのターミナル駅が、今も近郊電車 (CPTM) の駅として使用されています。それがルス (Luz) 駅とジュリオ・プレステス (Júlio Prestes) 駅です。
旧サンパウロ鉄道 (São Paulo Railway, SPR) のターミナル駅であったルス駅。サンパウロ鉄道は英国資本により設立された鉄道会社で、サントス (Santos) ~サンパウロ~ジュンジアイ (Jundiaí) 間を結んでいました。その一部区間が現在のCPTM 10号線および7号線として使用されています。英国風の大きな時計台が特徴的ですが、サンパウロ鉄道では、他にも多くの駅で英国風デザインが採用されています。現在、駅舎内にはポルトガル語博物館が設けられています。
ルス駅は、現在もサンパウロ都市圏鉄道ネットワークにおける重要な拠点であり、CPTMの7、10、11号線が発着しているほか、地下鉄1号線もこの駅で接続しています。将来的にはCPTM 8号線およびグアルーリョス国際空港連絡鉄道 (建設中) の乗り入れ、更には地下鉄4号線のこの駅までの延伸が行われる予定で、ターミナル駅としての地位はますます拡大していきます。
ホーム頭上に架かる橋は自由通路で、鉄道の利用客でなくとも自由に通行することができます。美しいドーム型屋根は鉄道ファン以外にも人気で、記念撮影をする人も多く見受けられます。
こちらは、旧ソロカバーナ鉄道 (エストラーダ・ジ・フェホ・ソロカバーナ Estrada de Ferro Sorocabana, EFS) のターミナル駅であった、ジュリオ・プレステス駅。ジュリオ・プレステスというのは、かつてのブラジル大統領の名前で、ブラジルではこの手の政治家の名前を冠した建築物が多く見られます。
ドーム式屋根を持つ頭端式ホーム。現在は、ソロカバーナ鉄道の流れを汲むCPTM 8号線のみが発着しており、ルス駅とは対照的にひっそりとしています。
現在、鉄道が使用しているのは駅施設のほんの端の部分のみで、駅舎の主要部分 (写真のガラス壁の向こう側) は改修され、コンサートホールとして使用されています。しかも近い将来には、CPTM 8号線はルス駅発着となって鉄道は廃止され、完全にコンサートホールのみの建物として生まれ変わることになっています。
ジュリオ・プレステス駅の裏手から見たルス駅。両駅は歩いていけるほど近くの距離にあります。実際のところ、8号線のみ発着駅が分かれているのは、利用客側としてもいささか不便な状況です。
CPTMの車両基地もすぐ隣にあります。よく見ると、パラナピアカーバ (Paranapiacaba) のケーブルカー区間で使用されたブレーキ車の姿も。