海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

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サンパウロ・移民博物館の「移民列車」

[2010年12月]

サンパウロにある「移民博物館」は、かつてブラジルにやってきた海外からの移民たちを最初に収容した「移民宿泊所」の施設を保存し、博物館として一般公開しているものです。かつて移民たちは、サントス (Santos) の港から列車に乗せられ、ここまで運ばれてきました。現在は博物館の展示の一環として、移民たちを乗せて走った列車を再現した「移民列車 (トレン・ドス・イミグランチス Trem dos Imigrantes)」が運行されています。運行は土日祝日に行われています。

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肝心の移民博物館は、現在は修繕工事のため長期休館中。しかし、移民列車だけは休館中も運転されています。門の前に停められた路面電車を囲う柵には、「マリア・フマサ (Maria Fumaça: 蒸気機関車)、のりばは1253番地」との幕が掛かり、営業中であることをアピールしています。


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この路面電車は、普段はここ移民博物館と最寄りの地下鉄駅ブレッセル (Bresser) との間を往復しています (週末のみ運行)。現在は、残念ながら博物館の休館とともに運休中の模様。車両は、ブラジルで一般的だったと思われる開放座席式です。架線はすでに撤去されていますが、この車両は内燃機関で動くように改造されているとのことです。


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移民列車は、この草が生えている線路を走ります。隣接しているプラットホームが、博物館開館中に使用する本来ののりばです。隣の線路は近郊列車 (CPTM) のもの。こちらにも簡素なホームがありますが、何に使われていたのかは不明です。軌間はどちらも1600 mmです。


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で、現在ののりばはこちら。博物館の入り口の斜め向かいですが、普通の人ならここに入り口があるとは気づかないでしょう。移民列車を運行するブラジル鉄道保存協会 (ABPF) のスタッフが前に立って、訪問客を案内しています。ちなみに、ここはCPTMの車両基地の一角で、鉄製の門の向こう側にはCPTMの列車が滞泊しています。


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博物館閉館中の臨時のりばですが、出札窓口、売店、トイレ等の設備は一通り揃えられています。休館期間は結構長いのでしょうか。


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こちらが現在のプラットホーム。車両1両分どころか、入り口ひとつ分、せいぜい朝礼台程度の大きさしかありません。「移民列車」の雰囲気はあまりでませんが、仕方がないところです。


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これが今回乗車する移民列車。この日の編成は、蒸気機関車、郵便荷物車、客車の3両編成です。


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蒸気機関車は、アメリカ・ボールドウィン社製の55341号機。従輪を持たない小型機で、1922年製です。


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2両目は、木製の郵便荷物車。製造年不明ですが、かなり古いものであることは確かです。


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こちらが今回乗車する客車。比較的近代的な車体構造で、上記の機関車、郵便荷物車と同時期に走っていたようには見えません。「移民列車」といっても、当時の列車編成まで忠実に再現するという趣旨ではなく、ブラジルを走ったさまざまな車両の保存運転という意味合いのほうが強いのでしょう。


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客車の車内は、座席はピッチの広いリクライニングシートで、どうみても一等車。車内に掲示されていたかつての路線図を見る限り、この車両はサンパウロ以西の内陸部で、長距離列車用として使用されていたようです。


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この区間には転車台も機回し線もないため、列車は推進運転で発車します。


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列車が走るすぐ脇の留置線には、ABPFが所有すると思われる車両たちが数多く保存されています。貨車から客車、機関車に至るまで、ブラジルのブロードゲージ区間で使用されていた多種多様な車両があり、中には、サントス-サンパウロ間のケーブルカー区間で使用されていた「ロコブレーキ (Locobreque)」(中央の緑の車両) などという珍しい車両の姿も見えます。


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保存車両は時代的にも多岐にわたってますが、写真奥の蒸気機関車など、すでに残骸に近い状態のものも。


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反対側の線路では、CPTMの列車が走り抜けていきます。


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10分ほどで終点に到着。線路は車止めで唐突に終わっています。旅行ガイドなどでは、路線長は数kmと紹介されていますが、地図で見る限りは片道1 kmもなさそうです。


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車内で熱心に解説を行うABPFのボランティアスタッフ。どうやら先ほどの保存車両の詳しい紹介などもしていたようですが、残念ながらポルトガル語なので一言もわからず。


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列車は来た道を再びもどります。


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下車時は、郵便荷物車の車内見学もできます。


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車内は、半室が郵便・電報関係、半室が荷物室という合造車です。


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全面木張りの内装、天井の明かり取り窓の様式など、かなり古い時代の車両のようです。このような車両が動態で保存されていることでも、ブラジルでの鉄道保存活動の活発さをうかがい知ることができるといえます。


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帰りは郵便荷物車から下車。全部の所要時間は、列車往復と車内の見学を合わせて、全部で30分程度です。保存鉄道としての規模は小さめですが、サンパウロ中心部からも近く、市内観光の合間に訪れることも十分可能です。


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なぜか、ホームから少し離れた「待機位置」まで逆進し、この場所で次の運行に備えます。


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