海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

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ベトナム鉄道の機関車


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ベトナム鉄道は全線非電化で、旅客用の気動車等も運行されていないため、全ての列車はディーゼル機関車牽引となっています。ほとんどが海外からの輸入に頼ってますが、ベトナムを取り巻く過去の国際情勢の影響もあり、輸入元の国々は多岐に渡っています。
なお、蒸気機関車は2000年代初頭まで本線上でもまだ活躍していたそうですが (ハイフォン線の貨物列車など)、現在はイベント用などの特殊用途を除き、本線上での現役機はありません。

ベトナム鉄道の客車の情報はこちら


車両番号のつけ方


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「形式名」-「個体番号」という付番方法は日本と同様です。

形式名は、ディーゼル機関車を表す"D"の文字が最初に付き、次に機関出力を表す数字 (x100ps)、最後に電気式 (E: Electric) か液体式 (H: Hydraulic) を表す文字が付きます。写真の例 (D19E) では、出力1,900ps (正確には1,950ps) の電気式ディーゼル機関車、ということになります。この命名規則では、たとえ別形式でも、出力が同じならば同じ形式名になってしまいます。幸い現在は重複は無いようですが、過去に全廃された形式と現存する形式とで、形式名が重複しているケースはやはり存在するようです。

また、メーターゲージ用と標準軌用とで姉妹形式が存在する場合に限って、標準軌用の形式にのみ"R"または"r"の文字を付けて、区別が図られています (ただし、ベトナム鉄道の一部資料では、客車を含む全ての標準軌用車両に"R"を付けて区別している場合もあります)。"R"は「広い」という意味の"Rong ゾン"に由来していると (私個人的に勝手に) 考えていますが、正確なところはわかりません。

一方、個体番号ですが、形式によって900番台のみ、2030番台のみが存在するなど、付番規則には謎もあります。

※以下の記載中にある配置、活躍地域等の情報は、管理人が個人的に確認した2011-14年頃の情報を基にしています。すでに情報が古くなっている可能性がありますので、あらかじめご承知ください。


メーターゲージ用ディーゼル機関車


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D4H … ソ連製の液体式小型機で、ソ連での形式名は"TU7 (ТУ7) "。キリル文字 (ロシア語アルファベット) の"ТУ"が"TY"と誤解され、ベトナム鉄道の一部資料でも"TY7"と記載されている場合があります。ベトナム全域にわたって配備され、短編成の旅客列車や貨物列車の牽引から、車両基地内での入換え用途まで、幅広く活躍しています。標準軌用も少数ながら存在し、そちらはD4HRと呼ばれています。


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D5H … オーストラリア製の液体式小型機で、クイーンズランド鉄道の狭軌 (1,067 mm) 路線で活躍していた車両を中古で譲り受けたものです。用途的には上のD4Hと重なると思われますが、両数が少なく、配置はベトナム北部地域に限られています。ラオカイ (Lào Cai) 線の一部で使用されるほか、ザーラム (Gia Lâm) ~ロンビエン (Long Biên) 間の旅客列車回送時に、後位側補機として活躍している姿を良く見ることができます。


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D8E … ベトナム製の片運転台型機で、2両のみの存在。当初は、2両ワンセットとしたプッシュプル運転での使用を想定し、専用色の客車とともにラオカイ線の特別列車に投入される予定だったようですが、テスト結果が不調だったとかで計画は中止。片運転台で低出力の極めて使いにくい構造が災いして、現在は2両ともドンダン (Đồng Đăng) 線で細々と使用されています。特徴的なドーム型前頭部も、その維持に苦労しているのが伺われます。


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D9E/D10E … 米国GE製の中型機。南ベトナム時代に導入された車両ですが、現在は北部地域にも一部転配されています。南北線 (統一鉄道) を走る中距離列車や、ドンダン線のローカル列車の牽引等で活躍しています。D10Eは、D9Eの一部を機関増強した改造機です。


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D10H … 中国製の液体式中型機。元は中国の昆河線で活躍していた東方紅21型 (DFH21) を中古で購入したものですが、なぜか現在も正面にはベトナム鉄道での制式名ではなく、DFH21との表記がなされています。一部車両の側面には米国キャタピラー社のロゴが記載されており、機関を換装されたものが存在するようです。ラオカイ線で貨物列車や一部旅客列車の牽引機として見ることができます。


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D11H … ルーマニア製の液体式中型機。ベトナム南北線 (統一鉄道) の中部地域 (ドンホイ~ダナン (Đà Nẵng) ~ジエウチー (Diêu Trì) 間) で、貨物列車と一部の旅客列車の牽引機として活躍しており、ハノイやホーチミンで見ることはありません。後継のドイツ製D20Eの導入により一部廃車も出ていますが、現在も中部地域ではありふれた存在です。


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D12E … 旧チェコスロバキアCKD製の中型機。ラオカイ線のほとんどの旅客列車で本形式が牽引機として使われています (イエンバイ (Yên Bái) 発着の区間列車を除く)。他にも、南北線やハイフォン (Hải Phòng) 線の一部の貨物列車で使用されています。


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D13E … インド製の中型機。北部地域と南部地域で中距離旅客列車や貨物列車の牽引機等として使用されています。北部配置車 (写真上) と南部配置車 (写真下) とで異なる塗色が採用されています。


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D18E … ベルギー製の大型機で、外観上の雰囲気はD12Eに似ています。中部地域で貨物列車の牽引機として使用されています。


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D19E … 中国南車製の大型機で、製造元での形式名はCKD7F。ベトナム鉄道の代表的存在で、「ドイモイ (Đổi mới) 号」という呼び名でも知られています。活躍路線は南北線 (統一鉄道) の北部地域 (ハノイ~ドンホイ (Đồng Hới) 間) および南部地域 (ジエウチー~サイゴン間)、それとハイフォン線など。角ばった印象の前期形 (写真上) と、丸みを帯びた外観を持つ後期形 (写真下) とがあります。ハノイ~サイゴン間の長距離旅客列車には、後期形が優先充当されているようにも見えますが、両者の運用が区別されているかどうかは定かではありません。


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D20E … ドイツ・シーメンス製の最新鋭大型機で、製造元での形式名はAR15。南北線 (統一鉄道) の中部地域に集中配備されており、ハノイやホーチミンでは見ることはありません。前述のD11Hとともに、同地域で旅客、貨物ともに広く活躍しています。


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TU6P … ソ連製の珍車。ベトナム鉄道で制式名はありません。元々はハイフォン線で使用するために輸入されましたが、自重の軽さのため所定の性能が得られず、程なくダラット (Đà Lạt) 線での観光列車牽引用として転配されたとのこと。機関車の後部は居住スペースとなっており、ダラット線での運用時も、運がよければその居住スペースに乗車を許される場合もあったようです。しかし、現在はダラット駅の構内に留置されたままで、現役機として使用されているかは不明です。



標準軌用ディーゼル機関車


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D4HR … 上述のソ連製小型機D4Hの標準軌版。


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D14E … 中国製の大型機。後述のD19Erとともに、ベトナム北部の標準軌路線 (ハロン (Hạ Long) 線) と三線軌条路線での主力として活躍しています。一見して両運転台型を思わせる顔つきですが、実はエンドキャブの片運転台型。


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D19Er … 標準軌用の最新鋭機。メーターゲージ用のD19Eと同じ中国南車製で、製造時期が近いこともあって、外観的な雰囲気はD19Eの後期形に似ています。


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