インダイアトゥーバの小さな鉄道博物館
[2011年6月]
かつての道路偏重政策の影響で、多くの鉄道路線が廃止されたブラジル。一方で、その遺産を観光資源として残そうという動きは多く、各地でかつての旧駅舎が保存されています。このインダイアトゥーバ (Indaiatuba) 駅もそのひとつですが、ここには、鉄道関連の展示物を集めたミニ博物館も併設されています。
インダイアトゥーバは、サンパウロから北西に約80 km、トヨタなどの日本企業も進出している人口約18万人の地方都市です。インダイアトゥーバ駅は、1873年の開業で、1991年の廃止まで、実に100年以上の歴史を持っていました。
奥に見える2つの窓口は、きっぷ売り場 (左) と電報の受付 (右) です。右の扉が旧駅事務所の入り口で、この内部に展示物がありますが、普段は鍵が掛かっています。
インダイアトゥーバ駅のプラットホーム。ホームは駅本屋隣接の一本のみですが、敷地の様子を見る限り、側線も2本程度はあったと思われます。写真奥には、ここ唯一の展示車両の姿も。
保存車両を整備していたボランティアのおじさんに頼んで、駅事務所の鍵を開けてもらいます。
駅事務室内部には、鉄道にまつわる道具類の展示のほか、かつてこの駅が現役として活躍していた時代の貴重な写真も掲示されています。おじさんの丁寧な解説付きですが、もちろん残念ながらポルトガル語のみ。
この駅は、かつてブラジルの鉄道黄金時代に栄華を誇った、旧ソロカバーナ鉄道 (エストラーダ・ジ・フェホ・ソロカバーナ Estrada de Ferro Sorocabana: EFS) の路線の駅で、各種展示物にも「EFS」の表記が多々見られます。それにしても、先のおじさんは本当に鉄道を愛してやまない方のようで、展示物一つ一つについて、実に一生懸命説明をしてくれます。ポルトガル語が判らないのがほとほと残念。
ブラジルといえばコーヒー。この鉄道も多くのコーヒー豆を運んでいたということでしょう。
おじさんが先ほどまで整備を行っていた、この博物館唯一の展示車両、10号蒸気機関車。1874年、米国ボールドウィン社製。この駅の誕生とほぼ同時期に製造されたようで、この駅に展示された理由とも関係しているのかも知れません。
本物かどうかはわからない駅名標。
廃線から約20年、レールは剥がされてしまいましたが、まだ軌道跡ははっきりと残っています。この駅が現役で活躍し、旅客列車も数多く運行されていた頃にブラジルを訪れてみたかったものです。