海外各地の旅行先で出会った鉄道風景を紹介します。日本国内の話題も時々。

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ホーチミン ~ クイニョン : 統一鉄道のもう一つの支線へ

[2012年2月]

ベトナム鉄道南北線 (統一鉄道) には、旅客列車が走る支線が二つあります。一つは以前に紹介した南部のファンティエット (Phan Thiết) 支線。そしてもう一つが、今回紹介する中部のクイニョン (Quy Nhơn、現地方言の発音では「ウイニョン」) 支線です。クイニョンは漁業とビーチリゾートで知られる海沿いの街で、ホーチミンからは約650 km。現在は、ホーチミンから直通する寝台列車の一往復が、この支線唯一の旅客列車として運行されています。

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乗車するのは、サイゴン19:35発、クイニョン行きSQN2列車。クイニョン行き寝台列車としては、2008年頃に豪華寝台列車「ゴールデン・トレインズ」が運行を開始しましたが、ニャチャン (Nha Trang) まで走っていた姉妹的存在の列車「ブルー・トレイン」共々、登場後数年も経たずにフェードアウト。現在は普通の寝台列車として運行されています。


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SQN2列車のソフトベッド車 (2段寝台車)。列車は前からHL (荷物車) - HC (食堂車) - A (ソフトシート車) x2両 - BN (ハードベッド車) x3両 - AN (ソフトベッド車) x4両 - CVPĐ (乗務員居住区+電源車) という、上級車両主体の12両編成です。荷物車を除く全車が、青、白、赤の三色から成る優等列車用の標準色となっています。


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こちらは、上の写真と同一車両の、「ゴールデン・トレインズ」塗色時代の写真 (2011年11月撮影)。豪華列車の記憶を留めていた車体色も、今は標準色に戻され、存在が忘れ去られようとしています。なお、ニャチャン行き「ブルー・トレイン」も状況は似たようなもので、この日に隣のホームに停まっているニャチャン行きSNT2列車 (20:00発) にも、もう専用色の車両は見られません。


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3段寝台のハードベッド車は、ソフトベッド車より1両少ない3両を連結。上級車両のほうが両数が多いのは、かつて「豪華列車」だった証でしょうか。


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そして2両のソフトシート車。数か月前に見た際は、更に非冷房ハードシート車も連結されていましたが、この日の列車には見られません。この列車に限らず、どの列車でも編成内容は若干流動的なようで、駅に掲載の運賃表には運賃が記載されているにもかかわらず、実際にはそのクラスの車両が連結されていないことも珍しくありません。


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牽引機は、南ベトナム時代から活躍する、米国GE製のD9E形ディーゼル機関車。


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車内に入ります。今回乗車するソフトベッド車。車内は暗色系でまとめられています。ハノイ行き列車のリニューアル車はもとより、ニャチャン行きの「豪華寝台」とも異なる内装となっており、「クイニョン行き専用車両」として、車体の塗色が標準に戻された現在でも運用が分けられているようです。とはいえ、その限定運用もいつまで続くか分りません。


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「チャット・ルオン・カオ (Chất lượng cao、高品質の意)」クラスとして、通常より一ランク上の扱いの寝台。料金も少しだけ高めの設定です。設備的な差異としては、枕元の個別照明と窓上のビデオモニターといったところで、配色を別にすればニャチャン行き列車とほぼ同じ仕様です。ビデオモニターには、今回は (幸い) 何も映されていません。この日の同室は、ベトナム人の若い男性1人。まだ時間は早いですが、早速ベッドにもぐりこみます。


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サイゴンを発って4時間ほど、列車はファンティエット支線が分岐する駅、ビントゥアン (Bình Thuận) に到着。駅名は、2011年10月にムオンマン (Mương Mán) 駅から改称されています。列車は既に40分ほど遅れてます。


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この日の車内は冷房の効きが悪く、よく目が覚めます。しかも固定窓車両であるにもかかわらず、しこたま蚊に刺されてしまってます。何度目かに目が覚めたとき、列車は夜明け前のニャチャン駅に停車中。早朝にもかかわらず、構内には多くの利用客がいます。隣のホームには、この列車の後に発車する、トゥイホア (Tuy Hòa) 行き各駅停車N12列車が停車しており、その利用客も含まれていると思われます。


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なんだかんだでそこそこ眠った後、目が覚めると、列車はトゥボン (Tu Bông) 駅に運転停車中。ここでまたハノイ~サイゴン間の列車を優先する形で、やや長めの運転停車をし、例によって遅れは拡大していきます。


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いよいよ列車は、クイニョン支線が分岐するジエウチー (Diêu Trì、現地方言の発音では「イウチー」) 駅へ。ジエウチー駅の南側には小さな車庫と、機関車の方転に使われるデルタ線 (写真中央の、奥に分岐していく線路) があります。


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ジエウチーには、随分と余裕の2時間遅れでの御到着。このジエウチー駅は、支線の終点で列車本数も少ないクイニョン駅と比較すると、南北線 (統一鉄道) の全列車が停車する主要駅であり、クイニョン市の事実上の玄関口となっています。実際、クイニョン出身のベトナム人に聞いてみると「クイニョンには駅が2つあるよ」と返ってきます。


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何故か列車の最後尾には、いつの間にか連結されていたD19E形ディーゼル機関車の姿。こんな形で機関車が回送されることもあるようです。クイニョンへの支線に入る前に、この駅で切り離されます。


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列車は本線と別れ、いよいよクイニョン支線へ。わずか10 km程度ですが、ここからが、今回の旅の主目的です。


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そのわずか10 kmを、列車は20分以上もかけて丁寧に (?) 走ります。街はなかなか見えません。


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側線がだんだんと増え、ようやくクイニョン駅へ到着。


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ジエウチーの方が駅として重要とはいえ、やはり街の中心部に近いクイニョン駅は利用者にも好まれるようで、多くの降車客があります。列車の長さに対して、プラットホームが足りていないのはご愛嬌です。


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列車の後端部は、大胆にもポイントの上に停車しています。降車客は毎度、ホームでないところを歩かされているらしく、雑草の中に道ができています。


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機関車は早速切り離され、早々に機回しの準備。


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クイニョン駅の駅舎。クイニョン駅は、少なくとも旅客列車が発着する駅としては、ベトナムにおいて唯一の頭端式構造です。


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クイニョン駅には、かつてはヴィン (Vinh) 行きのVQ列車、ニャチャン行きのQN列車なども発着していましたが、今は両列車とも設定がなく、駅の運賃表も空欄となっています。今回乗車したサイゴン発着のSQN列車が、現時点でクイニョン駅を発着する唯一の存在。基本的にはジエウチー駅を利用してください、というところでしょうか。列車の設定が面倒な枝線として徐々に地位が低下していくのは、日本もベトナムも事情は同じようです。


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クイニョン駅の表口。帰りも同じ寝台列車でホーチミンへ引き返し、というのもあまり芸がないので、帰路はクイニョン近郊のフーカット (Phù Cát) 空港から飛行機利用にします。フーカット空港はジエウチー駅以上に市街地から遠く離れており、タクシーで向かうと、所要40分で約600,000ドン (約2,400円)。この金額は、ここまで乗ってきたSQN列車のソフトベッド料金とほぼ同じです。


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