英国製の初代自強号・EMU100系
[2010年5月]
EMU100系は、1977年に電化開業した西部幹線に、新たな列車種別「自強号」を設定するに当たって導入された特急型電車です。電化技術の導入元がイギリスであったという事情からか、この車両もイギリス製で、台湾の鉄道ファンからは「英国婆仔」という愛称で呼ばれています。老朽化により一度は定期運用から撤退しましたが、車両不足の関係で、現在は毎週日曜に一往復のみ限定運行されています。
地下駅である台北駅に入線したEMU100系の彰化行き・自強号1121次。先頭車というより、客車の最後尾といった感じの顔つきです。登場後しばらくして、踏切事故防止のため前面に警戒色塗装が施されましたが、最近になって登場時の塗色が復活しています。列車は5両固定編成が2本連った総勢10両編成です。
台鉄 (台湾国鉄) の多くの車両に採用されている長円形の行先・種別表示。逆向きの文字と古風な書体が良い雰囲気を出してます。
高床ホームから逆段差気味のステップを上がり、車内に入ります。
台北を定時に発車した自強号1121次は、板橋を抜け、地上に出ます。台北近郊は比較的ゆっくり走行し、持ち前の高速性能はもてあまし気味です。
列車はほぼ満席の盛況。一部にこの車両目当ての鐵路迷 (鉄道ファン) らしき人も乗ってますが、大半は一般の人。こういう古い車両が使われた列車についてどう思っているのでしょうか。
台湾の優等列車は一般的にシートピッチが広く、それにあわせて窓も大型です。車窓を眺めるにはなかなか良い環境です。列車は台北郊外を抜け、快調に走ります。乗り心地は、すこしフワフワした感触で、なかなか上々です。
自強号は列車ごとに停車駅がかなり異なりますが、この列車は停車駅が少ない速達タイプ。板橋から50分経って、やっと二つ目の停車駅、新竹に停車します。
途中駅で見かけた、中華民国陸軍 (台湾陸軍) の軍用列車。こんな列車も走っているんですね。
台中でほとんどの客が下車し、列車はガラガラに。車内の散策に出かけてみます。
EMU100系のシートは、日本の国鉄時代のグリーン車のようで、座り心地も良好。非常出口に隣接したこの座席は、足元が広い「当たり席」でしょうか?
デッキからトイレ付近のつくりも少しレトロな雰囲気。客室への扉は手動の開き戸です。
乗降扉は手動式の折り戸。台湾ではこの手の手動扉がまだ多く残っており、列車がまだ停車しないうちから、乗客が扉を開けて降りてしまうといった光景が見られます。
前面展望、というほど眺めはよくありませんが、通路から運転席と前方の風景も拝めます。
台北から2時間少々、終点・彰化に到着。
行先表示の取替えは、このように手作業で。
裾の部分が丸く絞られているのは、イギリス製の特徴でしょうか。台鉄のほかの車両とは明らかに趣が異なります。
列車はしばしの停車の後、引き上げ線に回送されていきました。後ろ側に連結されて編成には、前面の警戒色が残されています。